安楽椅子あんらくいす)” の例文
旧字:安樂椅子
ターネフは、安楽椅子あんらくいすに、どっかと身をなげかけた。その前に小さいテーブルがあって、酒のびんさかずきとソーダ水の筒とがのっている。
爆薬の花籠 (新字新仮名) / 海野十三(著)
マリユスは建て物の他の部屋へやの者がだれも気づかないうちに二階に運ばれ、ジルノルマン氏の次のへやの古い安楽椅子あんらくいすに寝かされた。
今日こんにちこれ復興ふくこうするをべし、而してその復興ふくこうはうたるや、安楽椅子あんらくいすかゝり、或は柔軟じうなんなる膝褥しつぢよくうへひざまづ如何程いかほど祈祷きたう叫号きうごうするも無益むえきなり
問答二三 (新字旧仮名) / 内村鑑三(著)
向ふには、髪もひげもまるで灰いろの、ふとったふくろふのやうなおぢいさんが、安楽椅子あんらくいすにぐったり腰かけて、扇風機にぶうぶう吹かれながら
毒蛾 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
天井の高い、ガランとした広い部屋の中の空気はヒヤ/\と可成かなり冷たかつたが、彼は大きな安楽椅子あんらくいすに身を深く埋めてゐたから、それも平気であつた。
(新字旧仮名) / 相馬泰三(著)
広子は寝間着ねまきに着換えた上へ、羽織だけもんのあるのをひっかけたまま、円卓の前の安楽椅子あんらくいすへ坐った。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
わたしはその晩、旧友並山なみやま副領事の自宅に招かれて久しぶりに日本料理の馳走ちそうになった。食事のあとでハバナをくゆらしながら安楽椅子あんらくいすに腰を下ろしたわたしは、金門公園の不思議な青年の話をした。
謎の街 (新字新仮名) / 松本泰(著)
あなたは私にへやを一つ与えて下さるし、ポンメルシー夫人は私を愛して、あの人をいたわっておくれと安楽椅子あんらくいすに言って下さるし
「それからどのくらいたったかしれないが、気がついてみると、僕はいつの間にか安楽椅子あんらくいすのうえにながながと寝ていたんだよ」
人造人間エフ氏 (新字新仮名) / 海野十三(著)
彼は妻君が寝台の上に睡ってしまった後も、一人で安楽椅子あんらくいすによりながら、考えこんだ。白い天井を見上げると、黒い蠅が一匹、絵に書いたように止まっていた。
(新字新仮名) / 海野十三(著)
人々からとりあえず安楽椅子あんらくいすの上にのせられたまま身動きもしないで横たわってるマリユスを、バスクと門番とは客間の中に運んだ。呼ばれた医者は駆けつけてきた。
電話の声は、そうです、なんのことか分らないが、確かにパチノと書いてありますよ、と返辞へんじをして、その電話を切った。ジュリアは倒れるように、安楽椅子あんらくいすに身を投げかけた。
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
金博士は、別にそれを気にする様子もなく、安楽椅子あんらくいすの一つに、小さな身体をうずめた。
奥まった密室の安楽椅子あんらくいすのうえに身体をなげだすと、二人は顔を見合みあわせた。
見えざる敵 (新字新仮名) / 海野十三(著)
それは安楽椅子あんらくいすの上に放りだされてあった紙装かみそう小函こばこだった。
蠅男 (新字新仮名) / 海野十三(著)