むやみ)” の例文
うかとつて勿論嬉しいといふやうなことも思ツて居らぬ。たゞ一種淋しいといふ感に強く壓付おしつけられて、むやみと氣が滅入めいるのであツた。
青い顔 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
何のことをも感づくことができずに、全く満足し切っているように鈍い、その癖どこかおどおどしている女の様子に、むやみに気がいらいらして、顔の筋肉一つすら素直に働かないのであった。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
うなると、狼狽うろたへる、あわてる、たしかに半分は夢中になツて、つまずくやらころぶやらといふ鹽梅あんばいで、たゞむやみと先を急いだが、さてうしても村道へ出ない。
水郷 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
こみちが恰ど蜘蛛くもの巣のやうになツてゐて、橋がむやみとある土地だから、何んでも橋も渡り違へたのか、こみち曲損まがりそこねたか、此の二つにちがひなかツたのだが、其の時はうは思はず
水郷 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
そこで體を突ツ張つて、腕を足拍子あしひやうしを取つて、出來るだけえらさうに寛々ゆる/\と歩いて見る。駄目だ。些ともえらくなれない。何かむやみと氣にかゝツて、不安は槍襖やりぶすまを作ツておそツて來る。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
吸殼は火鉢の隅に目立つやうにかさになツて、口が苦くなる、頭もソロ/\たるくなツて來て、輕く振ツて見ると、后頭が鉛でも詰めてあるやうに重い。此うなると墨を磨るのさへものうい、で、むやみ生叺なまあくびだ。
昔の女 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
胸がどきりツとするやうな事がむやみとあツた。
水郷 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)