奇禍きか)” の例文
次郎と月江とは、道々もうわさをして来たそのおりんが、生埋めという、稀有けう奇禍きかに会ったと聞いても、にわかに信じかねました。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そういう風説のある中に余りこの国について日本に紹介しようとして調べた事がかえって奇禍きかを買うような事になってはつまらぬ。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
それを一種の不運とか奇禍きかとか言ってしまえばそれ迄であるが、マラリアに罹かったとか、蕃人に狙撃されたとか、水牛に襲われたとかいうのではなくして
深見夫人の死 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
それから少佐の奇禍きかに通りあわせて、ほんのすこしのきてんをきかせて助けたことを、恩にきていてくれる少佐。そしてこんなりっぱな一坪館を建ててくれた少佐。
一坪館 (新字新仮名) / 海野十三(著)
貴君方あなたがたに取って遊戯であることが、我々に取っては死である、と。青木君の死際しにぎわの云分も、つまりそれなのです。貴女は、青木君の死を単なる奇禍きかだと思ってはいけません。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
すなわち東洋諸国専制流せんせいりゅう慣手段かんしゅだんにして、勝氏のごときもかかる専制治風の時代にらば、或は同様の奇禍きかかかりて新政府の諸臣をいましむるのに供せられたることもあらんなれども
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
釣竿、奇禍きかを買はんとす
東京市騒擾中の釣 (新字旧仮名) / 石井研堂(著)
幸いにこういう奇禍きかを免れる事の出来たのもこれまたチベットへ入って奇禍を免れ安全に故郷へ帰って来られるという前兆ぜんちょうになったかも知れない。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
いわば信長の奇禍きかは、いて直ちに、家康のこの災難ともなって来たわけであるが、彼やまさに、四十になったばかりの男ざかりである。うろたえはしていない。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お兄さんの死は、形は奇禍きかのようですが、心持は自殺です。私は、そう断言したいのです。お兄さんは、死場所を求めて、三保から豆相ずそうの間を彷徨さまよっていたのです。奇禍が偶然にお兄さんの自殺を
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
それにこういう西洋物を持って居ては人から疑いを受けて奇禍きかを買うようになるから仏陀がわざとこういう物を失わせるようにされたかも知れない。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
いやその花栄も燈籠とうろうまつりで他家の宴に招待され、明け方帰って、初めて宋江の奇禍きかを知ったのである。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「重傷だね。助からないかも知れないよ。まあ奇禍きかと云うんだね。」
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
そしてわれ知らず老いたる父と女の婚期こんきが過ぎかけてゆくのも思わずに暮していたが、はからずも去年、その人の奇禍きかを知ると、居ても立ってもいられなくなった。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
てい劉禅りゅうぜん闇弱あんじゃく、楊儀の失敗、董允とういん蒋琬しょうえんの死去、費褘ひい奇禍きか、等々、国家の不幸はかさなっていた。
三国志:12 篇外余録 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
察していた通り、この者たちはすでに伊丹城中における官兵衛の奇禍きかも、また信長から出ている松千代の処分にたいする厳命も——世上の風聞によってく知っていたのである。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そういわれてから官兵衛は初めて信長のすがたを脳裡のうりに描いた。彼は、信長が今日まで、自分をどう考えていたか、また自分のうけた奇禍きかをどう観ていたかを、よく知っていた。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
宋江はしいて彼を対等な一椅子いすにつかせ、そして、鄆城県うんじょうけん出奔の事情から、つい先ごろ、花栄の家に身を寄せているうちの奇禍きかと、りゅう夫妻の奸計におちたことなどを、逐一ちくいち諄々じゅんじゅんとはなしてゆき
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ついに大変な奇禍きかに会ってしまった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)