太刀疵たちきず)” の例文
とぢられけり然ば吾助白状はなすと雖も落着らくちやくに致されざるは越前守殿吾助が面體めんてい太刀疵たちきずと云何樣なにさまくせあるべき惡漢わるものと見られし故内心ないしんには今一應吟味致し舊惡きうあく有ば糺明きうめい有んと思は
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
然し其時の闘は如何にも突嗟とっさに急激に敵が斫入きりいったので、氏郷自身までやりを取って戦うに至ったが、事済んで営に帰ってから身内をばあらためて見ると、よろい胸板むないた掛算けさん太刀疵たちきず鎗疵やりきずが四ヶ処
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
赤大名の城が落ちて、木曾殿打たれたまいぬ、とどぶの中で鳴きそうな、どくどくのあわせつま、膝を払って蹴返した、太刀疵たちきず、鍵裂、弾疵たまきず、焼穴、あられのようにばらばらある、なりも、ふりも、今の先刻さき
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
尋ねんとて飛鳥山下あすかやました通りより段々千住の方へとおもむく途中にて五六人の男が歩行あるきながらのうはさ今朝こんてう千住にて召捕めしとられたる者有しが小鬢こびんに餘程のふる太刀疵たちきずの有程の者故何でも只者たゞものには有まじと云を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)