大破たいは)” の例文
堂は形だけ残っておりますけれども、勿体もったいないほど大破たいはいたして、そっと参ってもゆかなぞずぶずぶと踏抜ふみぬきますわ。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
多数の船舶が難破なんぱしたが、その中の一隻に奇竜丸きりゅうまるという二百トンばかりの船があって、これは大島の海岸にうちあげられ、大破たいはした。また乗組員の半数が死傷した。
鞄らしくない鞄 (新字新仮名) / 海野十三(著)
村の青年達が八幡様の鳥居を直した帰途かえりに立寄って、廊下の壁の大破たいはを片づけたり、地蔵様をき起したりしてくれました。あとは前述の如く素人大工で済ませて置きます。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「や、もう大破たいはでござって。おもりをいたす仏様に、こう申し上げては済まんでありますがな。ははは、私力わたくしちからにもおいそれとは参りませんので、行届ゆきとどかんがちでございますよ。」
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
奥州筋おうしうすぢ近来きんらい凶作きようさく此寺このてら大破たいはおよび、住持ぢうじとなりても食物しよくもつとぼしければそう不住すまず明寺あきでらとなり、本尊ほんぞんだに何方いづかた取納とりおさめしにやてらにはえず、には草深くさふかく、まこと狐梟こけうのすみかといふもあまりあり。
甲冑堂 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「へい、殿樣とのさまへ、御免ごめんなせいまし。」としりからげのしまつた脚絆きやはん。もろにそろへてこしかゞめて揉手もみでをしながら、ふとると、大王だいわう左右さいう御傍立おわきだちひとつはちたか、こはれたか、大破たいは古廟こべうかたちめず。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)