墨斗やたて)” の例文
せり上げの間はすでに柱に歌を書きをはり、立身たちみにてやや下手に向き、墨斗やたての紐を巻き居る体なり。笠は水盤によせかけあり。
両座の「山門」評 (新字旧仮名) / 三木竹二(著)
えいじける故流石さすが公家くげ侍士さふらひ感心しこし墨斗やたてを取出し今一度ぎんじ聞せよと云に女は恥らひし體にて口籠くちごもるを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
橋をわたらずときゝて心おちつき、岩にこしかけて墨斗やたてとりいだし橋をうつしなどして四辺あたりを見わたせば、行雁かうがんみねこえて雲にをならべ、走猿そうゑんこずゑをつたひて水にうつす。
ト僕ガ言つてはヤツパリ広目屋臭ひろめやくさい、おい悪言あくげんていするこれは前駆ぜんくさ、齷齪あくせくするばかりが平民へいみんの能でもないから、今一段の風流ふうりう加味かみしたまへたゞ風流ふうりうとは墨斗やたて短冊たんざく瓢箪へうたんいひにあらず(十五日)
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
筆を墨斗やたてにをさめ、札を肩にかけ、立上り、右に柄杓ひしゃくを持ち、左にかさを持ち、斜に下手に向ひて、柱に記しし歌を読み「順礼に」にて五右衛門が打ち出す手裏剣を右手の柄杓に受け止め
両座の「山門」評 (新字旧仮名) / 三木竹二(著)