執持とりもち)” の例文
汝等が執持とりもち致せしも同前なりしかるに九助は其等の儀をいからずして速かに離別に及び父が遺言ゆゐごんおもんじ不埓ふらちの伯父女房等に大切たいせつの金子を配分はいぶんいたし遣たるを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
畔柳元衛くろやなぎもとえの娘静緒しずおやかたの腰元に通勤せるなれば、今日は特に女客の執持とりもちに召れて、高髷たかわげ変裏かはりうらよそひを改め、お傍不去そばさらず麁略そりやくあらせじとかしづくなりけり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
上役の人の家にしかるべき来客などのある時には、「お執持とりもちに森のおもう様をお願いするといい」
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
それが十三四の頃のいたずらな彼そのままで、おせんは遠くから眺めながら幾たびもくすくすと笑った。……そのとき庄吉はひどく蒼い顔をして、元気のないようすで客の執持とりもちをしていた。
柳橋物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
そのは、ちょうど植木だな執持とりもち薬師様と袖を連ねた、ここの縁結びの地蔵様、実は延命地蔵尊の縁日で、西河岸で見初みそめて植木店で出来る、と云って、宵は花簪はなかんざし、蝶々まげ、やがて、島田、銀杏返いちょうがえし
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あづかり歸りしが或日兩親の居ぬひまかんがへ右の文をわたしければお高は容體かたちを改め其方そなたは主人の娘にこひ執持とりもち爲事なすこと不埓ふらち千萬なりかさねて斯樣なる事をなさばためになるまいぞと嚴敷きびしくはづかしめて文を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)