土匪どひ)” の例文
自分の襟がみを吊るしあげている逞しい腕を、生半可なまはんか引掻ひっかきなどしたので、土匪どひは、この小さい者にも疑いぶかい眼を光らした。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
トランクも次手にもたせかけて置こう。さあ、これで土匪どひに遇っても、——待てよ。土匪に遇った時にはティップをやらなくっても好いものかしら?
雑信一束 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
子供はえるし、飢饉年は続くし、税金は重なるし、土匪どひや兵隊が乱暴するし、官吏や地主がのしかかって来るし、すべての苦しみは彼をして一つの木偶でくとならしめた。
故郷 (新字新仮名) / 魯迅(著)
土匪どひらし、村の治安が強固になり、めいめいの生活が平和にかえると、誰ひとりこの地方では、武蔵の名を呼び捨てにする者はなかった。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「きのう僕はそう言ったね、——あの桟橋の前の空き地で五人ばかり土匪どひの首をったって?」
湖南の扇 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
四川しせん広東カントンは? ちょうど今戦争の真最中だし、山東さんとう河南かなんの方は? おお土匪どひが人質をさらってゆく。もし人質に取られたら、幸福な家庭はすぐに不幸な家庭になってしまう。
幸福な家庭 (新字新仮名) / 魯迅(著)
土匪どひたちは山刀を抜きつれた。また、おのを持った男は横へ飛んで来た。猪槍ししやりの穂も、それと共に、斜めから武蔵の脾腹ひばらうかがうように低くつめ寄って来る。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いやしくも支那を旅行するのに愉快ならんことを期する士人は土匪どひに遇う危険は犯すにしても、彼等の「第二の愛郷心」だけは尊重するように努めなければならぬ。上海の大馬路ダマロはパリのようである。
長江游記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
乱を見れば忽ち蜂起ほうきして、好餌こうじあさりまわる土匪どひの徒や野武士の集団は、故信長の遺業がここまでになっていても、まだまだ決して根絶されてはいない。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「これか? これは唯のビスケットだがね。………そら、さっきこう六一と云う土匪どひの頭目の話をしたろう? あの黄の首の血をしみこませてあるんだ。これこそ日本じゃ見ることは出来ない。」
湖南の扇 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そうすれば、この子はきっと、奴隷どれいに売られるか、土匪どひに手なずけられるか、いい人間には成りっこありません
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「さあ、土匪どひ斬罪ざんざいか何か見物でも出来りゃ格別だが、………」
湖南の扇 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
それらの詳細も知りたいはもちろんであったが、さし当っては、帰国までの通路にあたる地方の領主の志向と、土匪どひの出没や一揆いっきの有無などが重大だった。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
始め出して、民家へ掠奪にはしるかもしれません。さすれば将軍の兵馬は、たちまち土匪どひと変じます。昨日の義軍の総帥もまた、土匪の頭目と人民から見られてしまうでしょう
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
播州ばんしゅうの山々や僻地へきち海浜かいひんがふくまれているため、いたるところに土豪が住み、強賊ごうぞくが勢力をつくり、これらの土匪どひ討伐とうばつしていたひには、ほとんど、戦費と煩労はんろうに追われてしまい
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
明らかにふるえをおびている。さっきからの微かな物音や人声に、主人か妻女かが、眼をさまして、一方をゆり起し、土匪どひの襲来をさとって、観念の眼をふさいでいたところにちがいない。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ほかの譜代ふだいにくらべ、年月こそまだ短いが、黒田父子が被官となってからは、小寺家の領内には土匪どひの横行もまったくみ、失地は敵の手から回復し、領民はその徳政によく服していた。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
河南の都から北へ北へと落ちのびてくる途中何回となく土匪どひや流賊におそわれて、家財も家族も身に着けていた物も、すべてをぎとられてしまい、残ったのは、裸に近い一箇の肉体だけであった。
人間山水図巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
土匪どひか? 今のは」
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
土匪どひの襲来?
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)