まわ)” の例文
旧字:
「わあっ」というときの声と共に、よろいに身を固め、物々しく武装した一隊、二百余騎にまわりをどっと取り囲まれてしまった。
いて居る千世子にとって自分のまわりをかこむ人が一人でもえると云う事が嬉しかったし又満足されない自分の友達と云うものに対しての気持を
千世子(二) (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
人のお世話にならないで自分の身のまわりをなるべく多く足す、また足さなければならない時代があったものでしょう。
道楽と職業 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
まわりのやいばは穴から水の噴くように、彼の虚へ向って衝いて出るはずであるが、そういう者もなく、数珠ずずのような沈黙に縛られている大勢のうちから
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
会議がはじまるときには、十三人の会員が全部揃って、粛々しゅくしゅく円卓子まるテーブルまわりをとりかこんだ。
人造人間殺害事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
だが、あの岩は高さ三尺程で、まわりも極く狭かった。あんな小さな岩の中へ、一人の人間が隠れられるとは思えんのじゃ。それにも拘らず、そこには確かに人間が入っている。
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
その翌年にファラデーは、電流の通れる針金を磁極のまわりに廻転させる実験に成功した。
近き畑の桃の花、垣根の端のなしの花、昨夜の風に散ったものか、苗代のまわりには花びらの小紋が浮いている。行儀よく作られた苗坪ははや一寸ばかりの厚みに緑を盛り上げている。
春の潮 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
井戸のまわりには樹が四、五本ありまして、井戸の所は草が茫々と生えていました。
支倉事件 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
仕事場のふいごまわりには三人の男が働いていた。鉄砧かなしきにあたる鉄槌かなづちの音が高く響くと疲れ果てた彼れの馬さえが耳を立てなおした。彼れはこの店先きに自分の馬を引張って来る時の事を思った。
カインの末裔 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
あわてた平家方は、御所のまわりをがんじがらめに警戒し、一門は六波羅に集って、善後策を協議することになった。慌てたのは、後白河院も同じである。
ところが、夜になると、ほとんど毎夜のように、番小屋のまわりを人の駈ける跫音が、追いつ追われつ駈け巡るというのである。戸を開けて見ると何も見えない。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まわりの幾つかの顔が声の方へ振り向いた。広間じゅうのざわめきがしずまった。森とした寄木の床の上で誰かが椅子をずらせた。——改った咳払いの声がする。……
伸子 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
「もう一度だけ、小松殿にお逢いしたいのだが」といってみたが、許されるわけはなく、まわりはものものしい武装兵ばかりがびっしりと取り囲み、一人の縁者、家来の姿もない。
まわりの屋根を見まわしたり、ふとまた側の梅のこずえ
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
更に、身のまわりのこまごました仕度までも、何くれとなく気を配ってくれたのであった。