呑噬どんぜい)” の例文
裏切ったりみ疲れたりしたことだろう! 彼らは皆、当時のあらゆる党派の為政家らを呑噬どんぜいしてる災厄の犠牲となっていた。
なんとなれば万邦・万人、みなよだれを流し、きばを磨し、みなその呑噬どんぜいの機会をまつをもって少しく我に乗ずべき隙あらばたちまちその国体をうしなうに至らん。
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
その言葉の意味は明らかに、殺しほふりはぎ取るというのをいっしょにしたものであることは、説明するまでもない。食うの真の意味は呑噬どんぜいするというのである。
拝火教徒が火中に迎えたものは、「すべてを呑噬どんぜいするもの」の影であった。今日でも、神道の日本人がその前にひれ伏すところのものは、剣魂つるぎだましいの氷のような純潔である。
茶の本:04 茶の本 (新字新仮名) / 岡倉天心岡倉覚三(著)
今日ではもっぱら知力を用いて相互に呑噬どんぜいたくましうするよりほかなき境遇にいたったのである。
脳髄の進化 (新字新仮名) / 丘浅次郎(著)
さるを却りて世の人を驅りて、おそろしき呑噬どんぜい爭奪の境界に墮ちしめんとする如くなるは、好しとはおもはれず。そは兎まれ角まれ、おん身はいかにして即興の詩を歌ひ給ふか。われ。
斯くして國際的の呑噬どんぜい行動を絶滅し、互いに相融和するに至らば、ユートピアならざるも、これに近き安樂國を出現するは疑いを容れず、巨大なる威力を獲得して、これを恐れるよりも
吾人は今日に於て人心の哲学的に傾くを怪しまざる也、唯其久しく之れ飢渇せしが為めに善き物としき物とを撰ばずして之を呑噬どんぜいつひに不消化不健康なる思想を蔓延せしめんことを憂ふ。
凡神的唯心的傾向に就て (新字旧仮名) / 山路愛山(著)
私がいかに自分の自我をうるさがってるかをあなたが知ってくだすったら! 私の自我は圧制的で呑噬どんぜい的なのです。それは神が私の首に結びつけた鉄枷てつかせです。
ローマの下水道は世界をのみ込んだのである。その呑噬どんぜいの口を、市と世界とに差し出したのである。全く市と世界とに(訳者注 ローマ法王の祝祷中にある言葉)である。
呑噬どんぜい獅子ししである。ひしひしと寄せてくる虚無を打倒している。そして戦いの律動リズムこそ最上の諧調かいちょうである。この諧調は命数に限りある汝の耳には聞き取れない。
いかなる大森林といえども、人を隠すことその大群集に及ぶものはない。各種の逃亡人はそのことを知っている。彼らはあたかも呑噬どんぜいふちに身を投ずるがごとくにパリーへ行く。
しかし彼の意志はなおたたかいつづけ、悪魔にたいする戦いの、進軍ラッパを吹奏していた……。「世に悪魔満ち渡り、われわれを呑噬どんぜいせんとするとも、あに恐るることがあろうぞ……。」
そして今や彼は、呑噬どんぜいの痛ましい深淵のうちに永久にころがり込む。
ゆえに彼は同国人らと同じように、ヨーロッパの精神的貴族社会を呑噬どんぜいしつつある腐食のうちに、フランスの芸術に固有な悪徳を、ラテン諸民族の欠点を、見て取らずにはいられなかった。
かくて子供は音響の森の中を逍遙しょうようする。自分のまわりに無数の知らない力を感ずる。それらの力は彼を待受け、彼を呼びかけ、そして彼を愛撫あいぶせんとし、あるいは彼を呑噬どんぜいせんとする……。
しかし鍛冶かじの熱が魂を満たさなくなるときには、無防禦な魂は、なくて済ませないそれらの情熱に委ねられる。魂は情熱を欲し情熱をつくりだす。情熱のために全身を呑噬どんぜいされなければやまない。
一民衆をことごとく呑噬どんぜいしている……。