口気こうき)” の例文
旧字:口氣
ようやくのこと人びとの口気こうきできょうの土曜日どようびというに気づいた。糟谷はいまがいままできょうの土曜日ということをわすれておったのだ。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
主人は不満な口気こうきで「第一気に喰わん顔だ」とにくらしそうに云うと、迷亭はすぐ引きうけて「鼻が顔の中央に陣取っておつに構えているなあ」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
中川がかくまで人に重んぜらるるを見て最前の若紳士たちましゃくに触りけん「オイ中川君」と何か挑むような口気こうきにて呼かけたり。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
念の為にもう一度繰り返せば、志賀直哉氏はこの人生を清潔に生きてゐる作家である。それは同氏の作品の中にある道徳的口気こうきにもうかがはれるであらう。
かくて妾は宛然さながら甘酒に酔いたる如くに興奮し、結ばれがちの精神も引き立ちて、互いに尊敬の念も起り、時には氤氳いんうんたる口気こうきに接しておのずから野鄙やひの情も
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
丁度さう云ふ問題を考へてゐた所であつたかと思はれるやうな口気こうきである。
この時まで前の若紳士は中川の言葉に何かすきあれかしとうかがいおりしがにわかに進みでてさも嘲弄ちょうろうするごと口気こうき
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
宗俊は、斉広が飜弄ほんろうするとでも思ったのであろう。丁寧な語のうちに、鋭い口気こうきを籠めてこう云った。
煙管 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
健三は迷惑を省いてやるから金を出せといった風な相手の口気こうきを快よく思わなかった。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ところがどてらの方では全然こっちの責任でだいぶやってるような口気こうきであった。だから自分は何だかどてらに対して弁解して見たい気がしたが、弁解する言葉がちょっと出て来なかった。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それを一部の社会では神聖な恋愛だとか人情の自然だとか、大層はやして奨励するような口気こうきがある。実に沙汰さたの限りだね。人間は誰でも自分の分限ぶんげんを守って心ののりを超えないのが美徳だ。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
そうしてその有望な前途を、安之助がすでに手のうちに握ったかのごとき口気こうきであった。かつその多望な安之助の未来のなかには、同じく多望な自分の影が、含まれているように、眼を輝やかした。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
と妙に人を嘲弄ちょうろうするような口気こうきあり。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
先生の口気こうきは珍しく苦々しかった。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)