南京玉なんきんだま)” の例文
それはちょうど、彼女が南京玉なんきんだまへ糸を通すように、これこそれっこになっていて、いまかつて見当をはずしたことはないのだ。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
二つの眼は黒い南京玉なんきんだまのように小さくつぶらに輝いて、脅えているのかと見ると嬉しそうにも見える。またきいきいと鳴く。その口の中は赤い。
蝙蝠 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
いつでもじさえすれば、ツルのかくした花や南京玉なんきんだまが、水のしたたる美しさでうす明かりの中にうかぶのであった。
花をうめる (新字新仮名) / 新美南吉(著)
さよは、それでほおずきをおうか、南京玉なんきんだまおうか、それともなにかおままんごとの道具どうぐおうかと、いろいろ空想くうそうにふけったのであります。
善いことをした喜び (新字新仮名) / 小川未明(著)
半七は顔をっている番頭をよび出して、この三日の日に南京玉なんきんだまを買いに来た田舎の人はなかったかと訊いた。
半七捕物帳:28 雪達磨 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
狭い店口へ南京玉なんきんだまつないだすだれ見たようなものがさげてある下から、かかとの高い靴をはいた女の足が四本ばかり見えたので、お千代は洋装でなければいけない店だと思って
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
南京玉なんきんだまの首飾りや毛糸の肩掛を持つて行つてやつたら、さぞのどをならして喜ぶだらう。
動物園 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
それからまた、びいどろといふ色硝子で鯛や花を打出うちだしてあるおはじきが好きになつたし、南京玉なんきんだまが好きになつた。またそれをめて見るのが私にとつて何ともいへない享樂きようらくだつたのだ。
檸檬 (旧字旧仮名) / 梶井基次郎(著)
編針あみばりの上に、こしらへかけてゐる財布の編目あみめの上に、集中しようとした——たゞ自分の手にある仕事の事だけを考へ、膝の上にある銀色の南京玉なんきんだまと絹絲ばかりを見てゐようと思つたのである。
支那人の行商人は、南京玉なんきんだまから、小間物、指輪、反物まで擔いできて
日本橋あたり (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
二つの眼は黒い南京玉なんきんだまのやうに小さくつぶらに輝いて、おびえてゐるのかと見るとうれしさうにも見える。またきいきいと鳴く。その口の中は赤い。
蝙蝠 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
彼女は花びらを一つずつ用い草の葉や、草の実をたくみに点景てんけいした。ときにはおびのあいだにはさんでいる小さい巾着きんちゃくから、砂粒すなつぶほどの南京玉なんきんだまを出しそれを花びらのあいだにはいした。
花をうめる (新字新仮名) / 新美南吉(著)
それからまた、びいどろという色硝子ガラスで鯛や花を打ち出してあるおはじきが好きになったし、南京玉なんきんだまが好きになった。またそれをめてみるのが私にとってなんともいえない享楽だったのだ。
檸檬 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
その花や南京玉なんきんだま有様ありさまが手にとるようにじたにみえた。
花をうめる (新字新仮名) / 新美南吉(著)