半透明はんとうめい)” の例文
別段食いたくはないが、あの肌合はだあいなめらかに、緻密ちみつに、しかも半透明はんとうめいに光線を受ける具合は、どう見ても一個の美術品だ。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
半透明はんとうめいにおやかなもやに包まれたかと思うと、その靄の中で、近々とやわらかに彼女の眼が光って、ひらたい唇が熱っぽく息づき、歯がだんだん見えてきて
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
円錐えんすい形の、しりとがった大きな柹であるが、真っ赤に熟し切って半透明はんとうめいになった果実は、あたかもゴムのふくろのごとくふくらんでぶくぶくしながら、日にかすと琅玕ろうかんたまのように美しい。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
そしてそのいしは、ごくふる時分じぶんには、日本につぽん産出さんしゆつしない支那傳來しなでんらい硬玉こうぎよく翡翠ひすい青瑯玕せいろうかん)といふ半透明はんとうめいうつくしい緑色みどりいろいしつくられてあつて、なか/\綺麗きれいなものでしたが、やゝのち時代じだいになると
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
群衆ぐんしゅうに囲まれた広場の、博士はくしの足もとの地上に、はじめはかすかに、それから少しずつ……半透明はんとうめいの人の形をした物が姿をあらわし、まもなく、若い男のはだかきずだらけのからだがよこたわっているのが
何せそう云ういい天気で、帆布が半透明はんとうめいに光っているのですから、実にその調和のいいこと、もうこここそやがて完成さるべき、世界ビジテリアン大会堂の、陶製とうせい大天井だいてんじょうかと思われたのであります。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)