匈奴きょうど)” の例文
むかししんの良臣は、匈奴きょうどの滅びざるうちは家を造らず、といいました。蜀外一歩出れば、まだ凶乱をうそぶく徒、諸州にみちている今です。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
食をけるときも強壮者が美味をとり老弱者に余り物を与えるのが匈奴きょうどのふうであった。ここでは、強き者がはずかしめられることはけっしてない。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
支那も、印度も、希臘も、一たびは不朽なるこの光栄を担った民族であった。匈奴きょうどの西欧侵略は何等の痕跡をも他の民族の文化には留めなかった。
冬日の窓 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
今から二千年も前、漢の国に、蘇武そぶという人があって、皇帝の使者として、北の方の匈奴きょうどという国へ行った。
無人島に生きる十六人 (新字新仮名) / 須川邦彦(著)
もと匈奴きょうどの根拠地だつたのが、次第に漢民族の侵蝕をかうむつて、ついにその殖民地になつたのだといふ。
夜の鳥 (新字旧仮名) / 神西清(著)
いわゆる支那北部の旧族、いわゆる支那の歴史あって以来周狄しゅうてきの後に匈奴きょうどとなり、それから種々の変遷を経てりょうきん、またげんとなり、ついに愛新覚羅あいしんかくら氏が起った。
東亜の平和を論ず (新字新仮名) / 大隈重信(著)
匈奴きょうどこの国にこうした時、王、金銀異色の大鼠を祭ると、敵兵の鞍から甲冑から弓絃ゆづるまで、ひもや糸をことごとく鼠群が噛み断ったので、匈奴軍詮術せんすべを知らず大敗した、王
平沙には匈奴きょうど王にまつろわぬところの、無数の種族の蛮人達が、現れたり隠れたりして敵意を示した。また沙丘には狼の群や、孤独の獅子や夫婦者の虎が、咆哮を上げて威嚇した。
沙漠の美姫 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
胡地こちにあって単于と刺違えたのでは、匈奴きょうどおのれの不名誉を有耶無耶うやむやのうちに葬ってしまうこと必定ひつじょうゆえ、おそらく漢に聞こえることはあるまい。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
しかも古来たびたび、匈奴きょうどの南下に侵された歴史の古い痍跡きずあとは、今とて、どこかここの繁華に哀しい陰翳いんえいを消していない。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
匈奴きょうどと呼ばれている、我々の先祖はあの有名な夏后かこう氏なのだ。我々の生活は自然で自由だ。水草を追って牧畜をする。馬や牛や羊や※駝らくだや、驢※ろや駃騠けってい騊駼とうと騨※てんけいや、こういう物を牧畜する。
沙漠の美姫 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
英国の学者までもドイツ人を匈奴きょうどすえののしり、その身に特異の悪臭あり全く英人と別種なるよう触れ散らすを見ては、学説の転変猫の眼もあきれるべく、アリア種の馬の名が、一番高尚とかいう説も
どうしても匈奴きょうどの主力は現在、陵の軍の止営地から北方郅居水しっきょすいまでの間あたりにたむろしていなければならない勘定になる。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
「——では打明けてやるが、帝王の問題は、今の漢帝を亡ぼしてから後の重大な評議になるんだ。匈奴きょうど蒙古族もうこぞく)のほうとも相談しなければならないから」
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
むかし匈奴きょうどの勢いがさかんな頃、しばしば中国を侵略して、時の漢朝も悩まされていた時代があります。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
西涼州せいりょうしゅう甘粛省かんしゅくしょう陝西せんせい奥地一帯)の太守馬騰ばとうをお召しになり、彼の擁している匈奴きょうどの猛兵や、今日まで無傷に持たれている軍需資源をもって、玄徳を討たせるのです。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
虎賁こほんの軍隊三十余万が、旌旗せいき旆旛はいばんを林立して、台下に立ちならび、このほか匈奴きょうどの黒童や化外かがいの人々も、およそ位階あり王府に仕えるものはこぞって、この祭典を仰ぐの光栄に浴した。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)