出処しゅっしょ)” の例文
旧字:出處
今この波瀾重畳険危な骨董世界の有様を想見そうけんするに足りるはなしをちょっと示そう。但しいずれも自分が仮設かせつしたのでない、出処しゅっしょはあるのである。
骨董 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
この鰹節の出処しゅっしょは寒月君のふところで、取り出した時はあったかく、手のひらに感じたくらい、裸ながらぬくもっていた。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
就中なかんずく、周の封建の時代と我が徳川政府封建の時代と、ひとしく封建なれども、その士人しじん出処しゅっしょを見るに、支那にては道行われざれば去るとてその去就きょしゅうはなはだ容易なり。
徳育如何 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
一見他に意味いみなきがごとくなれども、ロセツの真意しんいは政府が造船所ぞうせんじょ経営けいえいくわだてしその費用の出処しゅっしょに苦しみつつある内情を洞見どうけんし、かくして日本政府に一種の財源ざいげんあたうるときは
中には旅役者などの年中巡業してはいるが、出処しゅっしょわかっているという者も多いだろうし、また中年からきたり加わったのもむろん有るだろうが、少なくとも彼らの動く力には系図があるのである。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
ただ一筋の出処しゅっしょの裏には十重二十重とえはたえ因縁いんねんからんでいるかも知れぬ。鴻雁こうがんの北に去りて乙鳥いっちょうの南にきたるさえ、鳥の身になっては相当の弁解があるはずじゃ。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
すなわちこれ我輩わがはいが榎本氏の出処しゅっしょ所望しょもうの一点にして、ひとり氏の一身のめのみにあらず、国家百年のはかりごとにおいて士風消長しょうちょうめに軽々けいけい看過かんかすべからざるところのものなり。
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)