にせ)” の例文
新字:
普通の贋造がんざう小判は、銅脈か何んかににせの極印を打つたもので、眞物の小判に、僞の極印を打つといふのは、一寸考へられない事です。
編者未だ識別しきべつすることあたざれどもしはたしてしんならしめば吉宗よしむねぬしが賢明けんめいなるは言計いふばかりもなくにせにせとして其のあくあばかんすきぞくめつするは之奉行職の本分ほんぶんなれば僞者にせものの天一坊を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
にせ狂人! 尋常にり込んで来いッ!」
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
平次が八五郎に合圖をして、それを三味線堀に突き落さうとしたのは、にせの跛足を見破るため、左の頬を錢で打つたのは、僞眇足の眼を開かせるためでした。
見顯みあらはすは然のみ大功とは稱するに足ねどしんの天一坊をにせとしてよく天下の爲に是をめつせしは智術ちじゆつ萬人に越え才學さいがく四海に並ぶ者なき忠相ぬしに有らざれば誰人たれびとか能く此機變このきへんを行なひ君を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「八、この野郎は容易に口を割るめえ。請人をさがして、うんと絞つてみろ。どうせ所名前もにせだらう。本當の素姓が判つたら、親も女房子も皆な縛り上げて來い」
ふるはしつゝ茲な恩知ず者め傳吉どのが留守中何時なんどきの間にやら不義ふぎいたづら傳吉殿に此伯母がなに面目めんぼくのあるべきや思へばにくき女めと人目つくらうにせ打擲ちやうちやくも是れ又見捨て置れねば又人々は取押とりおさへ彼是れ騷動さうどう大方ならず時に憑司は
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「三七郎が殺された上は、その下手人を搜し出して、その惡者がにせの娘と見極める外はございません」
あの孝行はにせの孝行さ。有太郎が縛られると、命乞ひでもすることか、有金をさらつてあの母親は姿を隱してしまつたぢやないか、どうせ本當の母親ぢやあるまい。
にせ八五郎に金を渡した親達も小娘に伴れて來て、一々首實驗をさせましたが、和吉も竹松も北六も僞八五郎ではなく、尚ほ念のために見せた、船頭の金助と、磯五郎の死顏にも
半次はお糸の惡企わるだくみを皆んな知つて居るから、それを種に強引に口説くどいたことだらう。お糸は半次の口から事の露見を恐れて、にせ遺書かきおきまで用意して半次を眠らせる氣になつた。
淺草で小さい荒物屋の店を出して居るにせの兩親のところで育ちましたが、今から一と月前、母親が病氣で死ぬとき、——これは一生言はないつもりだつたが、默つて死んでは冥途めいどさは
「去年の暮でございます。長目の刀を摺り上げて、にせめいまで切らせました」
くり拔くと、にせの夜光石を包んだ手紙を、堂の中に放り込んでありましたよ
「貫々を引きさへすれば、誰にでもにせの千兩箱とわかりますよ」
飛退く女の帶際を猿臂ゑんぴを延ばしてむんずと掴んだにせ家光。
「さうだ、あの跛足はにせぢやない」
「あの聾はにせぢやないのか」