)” の例文
僕は一陣の風の中に餌ものを嗅ぎつけた猟犬のやうに、かすかな戦慄の伝はるのを感じた。——と云ふとらさうに聞えるかも知れない。
金春会の「隅田川」 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
燈台から燈台へ港から港へとかろうじて渡りつつあるのだ。何時いつ暗礁に乗上げて鯨に食べられてしまうかも知れないのである。全くらそうな事はいえないものだ。
油絵新技法 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
まことにこの森林の子、ゲルマン族のらさは、けて敗けず、むしろ焦土から倍旧の美しい、化学や芸術の花を咲かせて、敵国に復讐し、己れ甦生する所にある。
独逸の範とすべき点 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
吾人われわれは、いくらか名前を知られ、人の尊敬をるようになると、たちまちもうらくなったような気がして、心がゆるみ、折角せっかく青年時代に守り本尊としていた理想を
ソクラテス (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
もしも私が日蓮ほどのぶつであったなら、きっと私は草木を本尊とする宗教を樹立して見せることが出来ると思っている。私は今草木を無駄に枯らすことをようしなくなった。
「道理でわしも変なことだとは思っていたんだ。今の世の中にそんな幽霊なんていう莫迦ばからしいことがあるもんでねえとは思っていたんだが、どうもあんまり騒ぎの方がれえもので……」
逗子物語 (新字新仮名) / 橘外男(著)
恐ろしい君子があつたもんだ、芸妓買げいしやかひつて、自由廃業をさせて、借金を踏み倒ほさして、自宅うちへ引きずり込んで、其れで道徳堅固な君子と言ふんだ、成程耶蘇教ヤソけうと云ふものはらいもんだ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
「お母さん嘘で、実枝は勉強して、ろなって戻ってくるで」
(新字新仮名) / 壺井栄(著)
そんなおらがたを呼び寄せる力が無えってわけなんだ。
斜陽 (新字新仮名) / 太宰治(著)
「爺さん、れえ」と、幸次郎はくちれた。
半七捕物帳:47 金の蝋燭 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)