俤立おもかげだ)” の例文
貴婦人の背の高かったこと、蚊帳の天井から真白な顔が突抜けて出たようで——いまだに気味の悪さが俤立おもかげだってちらちらします。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
稲をくぐって隠れた水も、一面に俤立おもかげだって紫雲英げんげが咲満ちたように明るむ、と心持、天の端を、ちらちら白帆しらほきそうだった。
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
私は凭懸よっかかるものもなく、ぼんやりやみの中に立ったがね、あの人は、と思うと、目の下に、黒髪が俤立おもかげだつ。
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
さっくと削った荒造あらづくりの仁王尊が、引組ひっくさまいわ続き、海を踏んで突立つッたつ間に、さかさに生えかかった竹藪たけやぶ一叢ひとむら隔てて、同じいわおの六枚屏風びょうぶ、月にはあお俤立おもかげだとう——ちらほらと松も見えて
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あをいのがえて、先刻さつきしろはな俤立おもかげだつ……撫肩なでがたをたゆげにおとして、すらりとながひざうへへ、和々やは/\重量おもみたして、うでしなやかにいたのが、それ嬰兒あかんぼで、仰向あをむけにかほ
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
柱の姿も蒼白く、顔の色も俤立おもかげだって
浮舟 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
なぜか紫の俤立おもかげだつ。
妖術 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)