何樣どん)” の例文
新字:何様
此樣こんな時に、もしうちから誰かむかひに來て呉れたら、自分は何樣どんなにうれしかツたか知れぬ。併し其樣そんな事を幾ら考へてゐたツて無駄だ。
水郷 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
も見ずに迯行にげゆきしが殘りし二人は顏見合せこはい者見たしのたとへの如く何樣どんな人やらよくんと思へば何分おそろしく小一町手前てまへたゝずみしがつれの男は聲をかけいつその事田町とほりを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
空が瑠璃のやうに奇麗に晴渡はれわたツて、星が降るやうにきらめいている晩に、螢を追駈廻してゐるのは、何樣どんなに愉快な事であツたらう。
水郷 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
螢の薄光で、ほのかに見える其の姿は、何樣どんなに薄氣味うすぎみ惡く見えたろう。眼は妙にきらついてゐて、鼻はとがツて、そしてひげしろがねのやうに光ツて、胸頭むなさきを飾ツてゐた。
水郷 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
既に解剖した屍體をすら平氣で而もたくみに縫合はせる位であるから、其がよし何樣どんな屍體であツても、屍體を取扱ふことなどはカラ無造作むざうさで、鳥屋が鳥を絞めるだけ苦にもしない。
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
「侮辱ぢやない、こりや事實だ。もつとも女の眼から見たら男は馬鹿かも知れん。何樣どんな男でも、丁度俺のやうに、弱い體でもツて一生懸命に働いて、強壯な女をやしなツてゐるのだからな。」
青い顔 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)