たま)” の例文
旧字:
お情けでたまに載せて貰ふ写真。彼は息子に対して、いつも乍ら耻らひを感じた。此の息子の眼に、役者としての自分がどの位に映るだらう。
(新字旧仮名) / 久米正雄(著)
叔父は笑いながら、いっさんまるで火事場のようだろう、しかしたまにはこんな騒ぎをして飯を食うのも面白いものだよと云って、間接の言訳をした。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
往来を歩いて綺麗きれいな顔と綺麗な着物を見ると、雲間から明らかな日が射した時のように晴やかな心持になる。たまにはその所有者になって見たいと云うかんがえも起る。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
役者らしくたまには女も出来る。——思へば彼もうまい出世をしたものに相違なかつた。
(新字旧仮名) / 久米正雄(著)
たまには単に母の喜こぶ顔を見るだけの目的をもって内幸町まで電車を利用した覚さえあったのである。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「さうだな。それぢやたまには亘坊の相手にもなつて、河馬でも虎でも見て来ようか。」
(新字旧仮名) / 久米正雄(著)
たまにはう云ふ所へて見るのが、先生のためにはの位いかわからないのだのに。いくら僕が云つても聞かない。困つたものだなあ。と嘆息するに極つてゐるからなお面白い。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
たま一言二言ひとことふたことそれとなく問を掛けて見ても、三千代は寧ろ応じなかつた。たゞ代助の顔をれば、見てゐる其間そのあひだ丈のうれしさにおぼつくすのが自然の傾向であるかの如くに思はれた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
然し借りそくなつたので、すぐ返した。あとから借りた本は六※かし過ぎて読めなかつたから又返した。三四郎はかう云ふ風にして毎日本を八九冊ずつは必ず借りた。尤もたまには少し読んだのもある。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
代助は二人ふたりの子供に大変人望がある。あによめにもなりある。あにには、あるんだか、ないんだかわからない。たまあにおとゝが顔を合せると、たゞ浮世うきよ話をする。双方とも普通の顔で、大いに平気でつてゐる。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)