こもごも)” の例文
今夜それを読んだら、かなはない気がした。わづか百枚以内の短篇を書くのに、悲喜こもごも至つてゐるやうでは、自分ながら気の毒千万なり。
雑筆 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
頃者このごろ年穀ねんこく豊かならず、疫癘やくらいしきりに至り、慙懼ざんくこもごも集りて、ひとりらうしておのれを罪す。これを以て広く蒼生さうせいためあまね景福けいふくを求む。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
燕の師勇躍して進み、の軍を敗る。景隆の兵動く。燕王左右軍を放って夾撃きょうげきし、遂にしきりに其七営を破って景隆の営にせまる。張玉も陣をつらねて進むや、城中もまた兵を出して、内外こもごも攻む。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
干戈かんか満目まんもくこもごもふる
愛卿伝 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)