与太よた)” の例文
旧字:與太
「そんなことがわかるもんか。吉兵衛の口だけできめてかかれるもンじゃねえ。強がって与太よたっぱちを言ったのかも知れねえからの」
顎十郎捕物帳:18 永代経 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
よひくちにははしうへ与太よた喧嘩けんくわがあるし、それから私服しふくがうるさく徘徊うろついてゝね、とう/\松屋まつやよこで三にんげられたつてふはなしなんだよ。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
いつも、与太よたばかり云っているから、今日も、それかと思うだろうが、実あ先刻さっき、湯宿の二階から、いきなり名を
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
与太よたでナンセンスでいたずらっ児の彼は、ここでも本性を発揮して、明かさないことにきめてしまった。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
翻訳の稽古けいこでもしていたら、今ごろはこうしたことにもならずにすんだものを、創作なぞとがらにもないことを空想して与太よたをやってきたのが間違いだったかしれん。
贋物 (新字新仮名) / 葛西善蔵(著)
父の仕事はしかし、相も変らぬ与太よた仕事で、何でもたちのわるい恐喝きょうかつ新聞の記者であるらしかった。
捏造ねつぞう記事か与太よた記事かを見分けるためには、猫の眼玉みたいに変化する世界列強のペテンのかけ合いから、インチキとヨタでゴッタ返す政局の裏表、瓢箪鯰ひょうたんなまずの財界の趨勢
山羊髯編輯長 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
嘘と云つては失礼だが、例の「噂」であるか、「作り話」であるか、「与太よた」であるか、そこがどうもはつきりしない。それを真面目に論評などして、物嗤ものわらひになるのもいまいましい。
演芸欄 其他 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
加之おまけに、子供は多勢で、与太よた(頑愚)なものばかり揃つて居て——
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
裸体で勝手な恰好かっこうをするだけの、与太よたなものだった。
戦雲を駆る女怪 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
撮影所で与太よたってるんだよ。
華々しき一族 (新字新仮名) / 森本薫(著)
「何うだね? 与太よた息子は」
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
その声に、智深はつい気合いをはずしてしまい、しんとしていた与太よたもンたちの群れへ。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
晁蓋の生返辞なまへんじが気にくわないのだ。「ははアん。俺をただの与太よたもンと見て、相棒には不足と考えたに違いねえ」そう思うと、酒が業腹ごうはらきつけて、我慢がならなくなってきた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あのおとなしい兄さんだ。まさか街の与太よたもンと喧嘩したわけでもあるまいが」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)