下調したしらべ)” の例文
奉行所のお白洲へ突出す迄の下調したしらべをされてゐたお絹は、ガラツ八の辯明で其日のうちに許され、佐兵衞を呼出して、横山町の自宅へ歸しました。
しかし前から下調したしらべをしておくようないとまが無かったのだから、何事もそのつもりで聞いて貰わなければならない。あるには有る。例えば羅馬ローマという国だ。
不吉の音と学士会院の鐘 (新字新仮名) / 岩村透(著)
一通り取調べて奉行附の用人へ申達しんたつして、吟味与力へ引渡し、下調したしらべをいたします、これが只今の予審で、それから奉行へ申立てゝ本調になるという次第でございます。
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
芝居へも縁日えんにちへも必ず連立つれだって行く。小説や雑誌も同じものを読む。学課の復習試験の下調したしらべも母がそばから手伝うので、年と共に竜子自身も母をば姉か友達のように思う事が多かった。
寐顔 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
おとうとかれ性質せいしつとして、そんなちゆうぶらりんの姿すがたきらひである、學校がくかうても落付おちついて稽古けいこ出來できず、下調したしらべかないやう境遇きやうぐうは、到底たうてい自分じぶんにはへられないとうつたへせつしたが
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
その畳の色の赤黒く光った様子がありありと、二十余年後の今日こんにちまでも、眼の底に残っている。部屋は北向で、高さ二尺に足らぬ小窓を前に、二人が肩と肩を喰っつけるほど窮屈な姿勢で下調したしらべをした。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)