下枝したえだ)” の例文
然し此頃では唯其杉の伐られんことを是れ恐るゝ様になった。下枝したえだを払った百尺もある杉の八九十本、欝然うつぜんとして風景を締めて居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
九州きうしうさるねらふやうなつまなまめかしい姿すがたをしても、下枝したえだまでもとゞくまい。小鳥ことりついばんでおとしたのをとほりがかりにひろつてたものであらう。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
道家は早く林の下を出ようと思って歩いたが、ち落ちた下枝したえだが重なっていて足をとるので早くは歩けなかった。
赤い土の壺 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
お葉は更にって縁先えんさきに出た。左の手には懐紙ふところがみを拡げて、右のかいな露出あらわに松の下枝したえだを払うと、枝もたわわつもった雪の塊は、綿を丸めたようにほろほろと落ちて砕けた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
深い草や、足にまといつく下枝したえだをかきわけて、しばらく丘をのぼりましたが、やっぱりだめでした。
灰色の巨人 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
玉蘭はくれんは花うやうやしるとして散りつつ冴えぬその下枝したえだ
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
落葉松からまつ下枝したえだは、もう褐色かっしょくに変っていたのです。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
あれあれ雀が飛ぶように、おさえのはしの石がころころと動くと、やわらかい風に毛氈をいて、ひらひらと柳の下枝したえだからむ。
雛がたり (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
鶯やまれにあづさ下枝したえだ傍目わきめすれども鳴く音しめらず
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
鶯やまれにあづさ下枝したえだ傍目わきめすれども鳴く音しめらず
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)