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いつせつ
とその
家庭の
苦痛を
白状し、
遂にこの
書の
主人公、
後に
殺人の
罪人なるカ……イ……を
伴ひて
其僑居に
歸るに
至る
一節極めて
面白し。
思はず寒さに
胴顫ひすると同時に
長吉は
咽喉の奥から、今までは
記憶してゐるとも
心付かずにゐた
浄瑠璃の
一節がわれ知らずに流れ出るのに
驚いた。
考へて見れば
無理の無い所で、
而して
此間の事は
硯友社のヒストリイから
云ふと大いに
味ふ
可き
一節ですよ
と
清元の一派が他流の
模すべからざる
曲調の
美麗を
托した
一節である。
長吉は
無論太夫さんが首と
身体を
伸上らして
唄つたほど
上手に、
且又そんな大きな声で
唄つたのではない。