一節いつせつ)” の例文
とその家庭かてい苦痛くつう白状はくじやうし、ついにこのしよ主人公しゆじんこうのち殺人さつじん罪人ざいにんなるカ……イ……をともなひてその僑居けうきよかへるにいた一節いつせつきはめて面白おもしろし。
罪と罰(内田不知庵訳) (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
思はず寒さに胴顫どうぶるひすると同時に長吉ちやうきち咽喉のどの奥から、今までは記憶きおくしてゐるとも心付こゝろづかずにゐた浄瑠璃じやうるり一節いつせつがわれ知らずに流れ出るのにおどろいた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
考へて見れば無理むりの無い所で、さうして此間このかんの事は硯友社けんいうしやのヒストリイからふと大いにあぢは一節いつせつですよ
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
清元きよもとの一派が他流のすべからざる曲調きよくてう美麗びれいたくした一節いつせつである。長吉ちやうきち無論むろん太夫たいふさんが首と身体からだ伸上のびあがらしてうたつたほど上手じやうずに、かつまたそんな大きな声でうたつたのではない。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)