一歳ひとつ)” の例文
齢から言へば、孝子は二十三で、健の方が一歳ひとつ下の弟である。が、健は何かの事情で早く結婚したので、その頃もう小児こどもも有つた。
足跡 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
と夫婦の情で逢いたいから、すぐに飛出してこうかとは思ったが、一歳ひとつになるおさだの顔を見せたいと思いまして、これを抱起して飛んで参り
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
温厚おとなしい性質きだてりん一歳ひとつ違ひのその妹よりも𤍠の高い病人で居ながら、のぞく度に自分に笑顔を作つて見せるのであつた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
浪子が伯母加藤子爵夫人の長女、千鶴子というはこのなり。浪子と千鶴子は一歳ひとつ違いの従姉妹いとこ同士。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
その女の目出度めでたい元日を待ちながらも、また一歳ひとつ年を取るという淋しい心持を言ったのである。
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
私とおさやんは同年おないどしでしたけれども、おさやんは三月に生れて私は十二月に生れたからまあ一歳ひとつ違ひのやうなものだと私の母であるおさやんの叔母が何時いつも云ひますのを
私の生ひ立ち (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
まだ滿にして一歳ひとつにもならぬこの乳呑兒は、乳の香りする息を吐き吐き、春の光のもとの海といふ晴れがましい極彩の魔女の衣裳を、不思議な樣にマンジリ目を開いて見まもつてゐたのである……
地方主義篇:(散文詩) (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
第一大変きれいな手をしていますでしょうよ。でも一歳ひとつの時にはそれはおかしな手をしていました。ええそうですよ。——今では大きくなってるでしょう。もう七歳ななつですもの、りっぱな娘ですわ。
十九年前一歳ひとつの時に観音様の境内に籠に入れられて捨ててあったのを慈悲深い団十郎なりたやが拾い上げ手塩にかけて育てたところ、天の成せる麗々と不思議に小手先が利くところから今では立派な娘形で
大鵬のゆくえ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「いいえ、あれで賢一と一歳ひとつ違いですとさ。」
遺産 (新字新仮名) / 水上滝太郎(著)
兄弟三人皆軍籍に身を置いて、三男の狷介けんすけと云ふのが、静子の一歳ひとつ下の弟の志郎と共に、士官候補生になつてゐる。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
と力に任して二ツ三ツこじりましたから、無慙にもおくのは、一歳ひとつになるお定を負ったなり殺されました。
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
お定は打見には一歳ひとつ二歳ふたつも若く見える方で、背恰好の婷乎すらりとしたさまは、農家の娘に珍らしい位、丸顏に黒味勝の眼が大きく、鼻は高くないが笑窪えくぼが深い。
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
万一ひょっとして軽躁かるはずみな事をしてはならぬと、貞女なおくのでございますから、一歳ひとつになりますおさだと申す赤児あかんぼを十文字におぶい、鼠と紺の子持縞の足利織の単物ひとえものに幅の狭い帯をひっかけに結び
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
お定は、打見には一歳ひとつ二歳ふたつも若く見える方で、背恰好の婷乎すらりとしたさまは、農家の娘に珍らしい位、丸顔に黒味勝の眼が大きく、鼻は高くないが、笑窪が深い。
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
自分と石本俊吉とは、逢會僅か二分間にして既に親友と成つた。自分は二十一歳、彼は、けても見え若くも見えるが、自分よりは一歳ひとつ二歳ふたつ兄であらう。何れも年が若いのだ。
雲は天才である (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
自分と石本俊吉とは、逢会僅か二分間にして既に親友と成つた。自分は二十一歳、彼は、老けても見え若くも見えるが、自分よりは一歳ひとつ二歳ふたつ兄であらう。何れも年が若いのだ。
雲は天才である (新字旧仮名) / 石川啄木(著)