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ゆふがほ
夕顏には、
豆府かな——
茄子の
苗や、
胡瓜の
苗、
藤豆、いんげん、さゝげの
苗——あしたのおつけの
實は……
二時さがりに
松葉こぼれて、
夢覺めて
蜻蛉の
羽の
輝く
時、
心太賣る
翁の
聲は、
市に
名劍を
鬻ぐに
似て、
打水に
胡蝶驚く。
行水の
花の
夕顏、
納涼臺、
縁臺の
月見草。
棚して
架るとにもあらず、
夕顏のつる
西家の
廂を
這ひ、
烏瓜の
花ほの/″\と
東家の
垣に
霧を
吐きぬ。
強ひて
我句を
求むるにはあらず、
藪には
鶯の
音を
入るゝ
時ぞ。