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ひつかへ
餘りですから、
主人が
引返さうとした
時です……
藥賣の
坊主は、
柄のない
提灯を
高々と
擧げて、
椎の
樹の
梢越しに、
大屋根でも
見るらしく、
仰向いて
然も、
若旦那が
短銃を
持つて
引返したのを
知ると、
莞爾として
微笑んで、
一層また、
婦人の
肩を
片手に
抱いた。
一
臺の
腕車二
人の
車夫は、
此の
茶店に
留まつて、
人々とともに
手當をし、
些とでもあがきが
着いたら、
早速武生までも
其日の
内に
引返すことにしたのである。