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たかせぶね
築地の
河岸の船宿から
四挺艪のボオトを借りて遠く
千住の方まで漕ぎ
上つた帰り
引汐につれて
佃島の手前まで
下つて来た時、突然
向から帆を上げて進んで来る大きな
高瀬船に衝突し
一つの
不用の
分は
運河から
鬼怒川へ
通ふ
高瀬船へ
頼んで
自分の
村落の
河岸へ
揚げて
貰ふことにして、
彼は
煙草の一
服をも
忘れない
樣に
身につけた。
高瀬舟は京都の
高瀬川を
上下する小舟である。徳川時代に京都の罪人が
遠島を申し渡されると、本人の親類が
牢屋敷へ呼び出されて、そこで
暇乞いをすることを許された。
渋江氏の一行は本所二つ目橋の
畔から
高瀬舟に乗って、
竪川を
漕がせ、
中川より
利根川に
出で、
流山、
柴又等を経て
小山に
著いた。江戸を
距ること
僅に二十一里の路に五日を
費した。