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しゆうてん
宗助が
電車の
終點迄來て、
運轉手に
切符を
渡した
時には、もう
空の
色が
光を
失ひかけて、
濕つた
徃來に、
暗い
影が
射し
募る
頃であつた。
降りやうとして、
鐵の
柱を
握つたら、
急に
寒い
心持がした。
電車の
終點から
歩くと二十
分近くも
掛る
山の
手の
奧丈あつて、まだ
宵の
口だけれども、
四隣は
存外靜かである。
時々表を
通る
薄齒の
下駄の
響が
冴えて、
夜寒が
次第に
増して
來る。
宗助は
懷手をして
其うちに、
電車は
終點に
來た。