近頃ちかごろ)” の例文
をとこ女蕩をんなたらしの浮氣うはきもの、近頃ちかごろあによめ年増振としまぶりけて、多日しばらく遠々とほ/″\しくなつてたが、一二年いちにねんふか馴染なじんでたのであつた。
一席話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
八のふかくしながら、せたまつろう眼先めさきを、ちらとかすめたのは、うぐいすふんをいれて使つかうという、近頃ちかごろはやりの紅色べにいろ糠袋ぬかぶくろだった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
どうも、そうさんもあんまり近頃ちかごろ御出おいででないし、わたし御無沙汰ごぶさたばかりしてゐるのでね、つい御前おまへこと御話おはなしをするわけにもかなかつたんだよ
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
これ面白おもしろい、近頃ちかごろ落語らくご大分だいぶ流行はやるから、何所どこかで座料ざれうとつ内職ないしよくにやつたら面白おもしろからう、事によつたら片商売かたしやうばいになるかもしれない。
落語の濫觴 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
日本につぽんアルプスの上高地かみこうち梓川あづさがはには、もといはなで、あしすべるといはれたほど澤山たくさんゐたものですが、近頃ちかごろはだんだんつてたようです。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
「さういふみじかいのは端布片はしぎれふにかぎるのさ、いくらにもつかないもんだよ、わたし近頃ちかごろついでもあるからつてつてもいよ」
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
幽明交通ゆうめいこうつうみち杜絶とだえているせいか、近頃ちかごろ人間にんげんはまるきり駄目だめじゃ……。むかし人間にんげんにはそれくらいのことがよくわかっていたものじゃが……。
日本にほん麻雀マアジヤン近頃ちかごろ少々せう/\ねこ杓子しやくしものかんじになつてしまつたが、わづか四五ねんほどのあひだにこれほど隆盛りうせい勝負事しようぶごとはあるまいし
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
著者ちよしやはじ此話このはなし南洋傳來なんようでんらいのものではあるまいか、とうたがつてみたこともあるが、近頃ちかごろ研究けんきゆう結果けつか、さうでないようにおもはれてたのである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
近頃ちかごろになってわたしは、いろんなことに慣れもしたし、ことにザセーキン家では、やっとこさいろんなことを見せつけられた。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
べん游侠ゆうきょうの徒、仲由ちゅうゆうあざなは子路という者が、近頃ちかごろ賢者けんじゃうわさも高い学匠がくしょう陬人すうひと孔丘こうきゅうはずかしめてくれようものと思い立った。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
「署長さん、ご存じでしょうか、近頃ちかごろ林野りんや取締法とりしまりほうの第一条をやぶるものが大変あるそうですが、どうしたのでしょう。」
毒もみのすきな署長さん (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
近頃ちかごろ石匕いしさじの名行はるる樣に成りしが、是とても决してとなへには非ざるなり。イースタアアイランド土人及びエスキモーはげん此石器このせききを有す。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
甚麼話どんなはなしるのでらうか、彼處かしこつても處方書しよはうがきしめさぬではいかと、彼方あつちでも、此方こつちでも、かれ近頃ちかごろなる擧動きよどう評判ひやうばん持切もちきつてゐる始末しまつ
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
江戸・大阪の浄瑠璃じょうるりに出てくる抱え遊女は、駆落かけおちの際でもなければ外へは出ぬものになっていたが、地方は近頃ちかごろまでかなりの自由があったらしい。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
一枚物ではソプラノで「宝石の歌」は昔メルバやファーラーのが有名であったが、近頃ちかごろのではコロムビアのヴァランかポリドールのシャンピだろう。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
エレメンタルスの名は元よりあつたでせうが、その活動が小説に現れ出したのは、近頃ちかごろの事に違ひありますまい。
近頃の幽霊 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
また近頃ちかごろ發掘はつくつされたツタンカーメンといふ王樣おうさまのおはかから黄金きんづくめのすてきな品物しなものやまのように陳列ちんれつせられて、ひとをびっくりさせてをります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
「ようございますとも。」女は近頃ちかごろにない好い心持ちで、こう答えた。もう一週間このかた、こんな風に心にわだかまりのない話し振をした事はなかった。
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
尤も最初の二三回は、普請場ふしんばの砂があったお蔭で助かったけれども、生憎あいにく近頃ちかごろは何処にも砂なんかありはしない。
猫と庄造と二人のおんな (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
ところが、それからだんだん国元の様子が父に不利になって来て、近頃ちかごろではまるっきり音沙汰おとさたもありません。うわさには一族郎党ろうとう、ほとんど全滅ぜんめつだとの事です。
鯉魚 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
しかしそれをこばんでこたへずにしまふのは、ほとんどそれはうそだとふとおなじやうになる。近頃ちかごろ協會けふくわいなどでは、それを子供こどものためにわるいとつて氣遣きづかつてゐる。
寒山拾得縁起 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
だから近頃ちかごろうた文學ぶんがくうへからは、かういふ態度たいどはよいとはいへないが、それにしてもつくつたものが相當そうとうによければ、やはりよいといふよりほかはありません。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
ソーンフィールドは立派な舊家きうかでございましてね、近頃ちかごろは、どちらかと申せば、打棄てられてゐるやうですが、それにしましても、立派な處なのでございます。
近頃ちかごろ時々とき/″\我輩わがはい建築けんちく本義ほんぎなんであるかなどゝむづ質問しつもん提出ていしゆつして我輩わがはいこまらせるひとがある。
建築の本義 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
そばから憑司はうなづきて恐れながら申上げん私し親類とは申せども近頃ちかごろは一向出入も仕つらず候處傳吉は其の朝にかぎり用事もこれなきに私し方へ參り悴夫婦せがれふうふ柏原かしはばらへ行事を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
東京とうきやうの或る固執派オルソドキシカー教会けうくわいぞくする女学校ぢよがつかう教師けうし曾我物語そがものがたり挿画さしゑ男女なんによあるを猥褻わいせつ文書ぶんしよなりとんだ感違かんちがひして炉中ろちう投込なげこみしといふ一ツばなし近頃ちかごろ笑止せうしかぎりなれど
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
君も知つてゐるとほり、薔薇はまだ出ないし、石竹せきちく近頃ちかごろ、むやみに註文があつたんで、すつかり使ひつくしてしまつたんだ。それに似寄りの染粉も、みんなになつてしまつたのだ。
虹猫と木精 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
梅屋敷うめやしきは文化九年の春より菊塢きくうが開きしなり、百花園くわゑん菊塢のでん清風廬主人せいふうろしゆじん、さきに国民之友こくみんのともくはしくいだされたれば、誰人たれびとも知りたらんが、近頃ちかごろ一新聞あるしんぶん菊塢きくう無学むがくなりしゆゑ
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
其處らがしんとして薄暗うすぐらい。體が快くものうく、そして頭が馬鹿に輕くなツてゐて、近頃ちかごろになく爽快さうくわいだ………恰で頭の中に籠ツてゐた腐ツたガスがスツカリ拔けて了ツたやうな心地である。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
あなたは、九州で、女学校の体操教師をしていると、近頃ちかごろ風の便りにききました。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
ところが、この法師が浮気者うわきものであったとみえ、近頃ちかごろは同じ遊女仲間の一人に、心をうつして、しげしげ通っているといううわさが、お兼の耳に伝わって来た。お兼は、安からず、思っていた。
大力物語 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
蕪村ぶそん芭蕉ばしょうの俳句に関しては、近頃ちかごろさかんに多くの研究文献が輩出している。
郷愁の詩人 与謝蕪村 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
それからしたはうへかけて、カリフォルニヤがい坂道さかみちを、断間たえまなく鋼索鉄道ケーブルカー往来わうらいするのがえる。地震ぢしんときけたのが彼処あすこ近頃ちかごろてかけた市庁しちやうあれと、甲板かんぱんうへ評定ひやうぢやうとり/″\すこぶやかましい。
検疫と荷物検査 (新字旧仮名) / 杉村楚人冠(著)
しかるに今月こんげつ初旬はじめ本國ほんごくからとゞいた郵便ゆうびんによると、つま令兄あになる松島海軍大佐まつしまかいぐんたいさは、かね帝國軍艦高雄ていこくぐんかんたかを艦長かんちやうであつたが、近頃ちかごろ病氣びやうきめに待命中たいめいちゆうよし勿論もちろん危篤きとくといふほど病氣びやうきではあるまいが
近頃ちかごろでは私は散歩といえば、自分でどこへ行こうなどと考えずに、この犬の行く方へだまってついて行くことに決めているようなわけなのである。蹄鍛冶屋の横道は、私はまだ一度も歩かない。
近頃ちかごろは、弓形になった橋の傾斜けいしゃが苦痛でならない。つかれているのだ。
馬地獄 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
おれは近頃ちかごろ欧羅巴ヨウロツパの往復に
南洋館 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
我は近頃ちかごろ煙草たばこみ習へど
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
近頃ちかごろはそれで名が通ってしまいましたが、もともと避暑地なんですから。今頃は花が一時に咲き乱れて何とも云えない良い季節ですよ。それなのに都会の人はまだ来ないし、土地の者は田植たうえで忙しい。だから静かに勉強するには申し分ありませんね」
浴槽 (新字新仮名) / 大坪砂男(著)
近頃ちかごろどうだい。
下町したまちはうらない。江戸えどのむかしよりして、これを東京とうきやうひる時鳥ほとゝぎすともいひたい、その苗賣なへうりこゑは、近頃ちかごろくことがすくなくなつた。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
御米およね御前おまへ神經しんけい過敏くわびんになつて、近頃ちかごろうかしてゐるよ。もうすこあたまやすめて工夫くふうでもしなくつちや不可いけない」とつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
しかし近頃ちかごろではもうそんなへた真似まねはいたしません。天狗てんぐがどんな立派りっぱ姿すがたけていても、すぐその正体しょうたい看破かんぱしてしまいます。
もつとも、支那人しなじん麻雀マアジヤンしたしい仲間なかま一組ひとくみたのしむといふやうに心得こゝろえてゐるらしいが、近頃ちかごろ日本にほんのやうにそれを團隊的競技だんたいてききやうぎにまですゝめて
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
「こまけえ勘定かんぢやうにや近頃ちかごろ燐寸マツチめてくんだが、何處どこ商人あきんどもさうのやうだな」商人あきんどたまござるれながらいひつゞけた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
おんなならではのあけぬ、その大江戸おおえど隅々すみずみまで、子供こどもうた毬唄まりうたといえば、近頃ちかごろ「おせんの茶屋ちゃや」にきまっていた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
どんなはなしをするのであろうか、彼処かしこっても処方書しょほうがきしめさぬではいかと、彼方あっちでも、此方こっちでも、かれ近頃ちかごろなる挙動きょどう評判ひょうばん持切もちきっている始末しまつ
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
しかしながら人間どもは不届だ。近頃ちかごろはわしの祭にも供物一つ持って来ん、おのれ、今度わしの領分に最初に足を
土神と狐 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
これは近頃ちかごろ西洋せいよう文明ぶんめいがはひつててもおなじことで、いかに西洋風せいようふうならつても、あるてんには日本人につぽんじんには日本人につぽんじんらしい趣味しゆみ特質とくしつが、えないのであります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)