浴槽よくそう
ここから関東平野を一気に千メートル登ろうという碓氷峠の、アプト式鉄道の小刻みな振動を背筋に感じながら、私は読みさしの本をわきに伏せた。 見おろす目の下に、旧道添いの坂本の宿が、きらきらと緑の美しい六月の光を吸って、音無しの村のように静まって …