もり)” の例文
檜木ひのきさはら明檜あすひまき𣜌ねず——それを木曾きそはうでは五木ごぼくといひまして、さういふえたもりはやしがあのふか谷間たにあひしげつてるのです。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
そこで信田しのだもりへ大ぜい家来けらいれて狐狩きつねがりにたのでした。けれども運悪うんわるく、一にちもりの中をまわっても一ぴき獲物えものもありません。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
たとへにも天生峠あまふたうげ蒼空あをぞらあめるといふひとはなしにも神代じんだいからそまれぬもりがあるといたのに、いままではあまがなさぎた。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
牛込見附みつけとき、遠くの小石川のもりに数点の灯影ひかげみとめた。代助は夕飯ゆふめしふ考もなく、三千代のゐる方角へいてあるいてつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
麦畑むぎばたけ牧場ぼくじょうとはおおきなもりかこまれ、そのなかふか水溜みずだまりになっています。まったく、こういう田舎いなか散歩さんぽするのは愉快ゆかいことでした。
「いま、さむかぜが、あちらのとおもりなかさわいでいる。」と、にわとりげますと、にわとりは、うなだれてからだじゅうをまるくしてちぢむのでした。
ものぐさなきつね (新字新仮名) / 小川未明(著)
吾等われら喫驚びつくりして其方そなた振向ふりむくと、此時このとき吾等われらてるところより、大約およそ二百ヤードばかりはなれたもりなかから、突然とつぜんあらはれて二個ふたりひとがある。
しなおもて大戸おほどけさせたときがきら/\と東隣ひがしどなりもりしににはけてきつかりと日蔭ひかげかぎつてのこつたしもしろえてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
つきすると、木々きぎこずえ青葉あおばつつまれ、えだえだかさなりって、小鳥ことりもりこだまこして、うえはならすくらいに、うたしました。
人無村ひとなしむらで、とんだいのちびろいをしたッきり、白旗しらはたもりのおくへもぐりこんでしまった竹童ちくどうも、ほんとに、頭脳あたまがいいならば、いまこそどこかで
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
此外▲有明ありあけうら岩手いはでうら勢波せばわたし井栗ゐくりもりこしの松原いづれも古哥あれども、他国たこくにもおなじ名所あればたしかに越後ともさだめがたし。
あいちやんはこれを哄笑おほわらひしました、しかし其聲そのこゑきつけられては大變たいへんだとおもつていそいでもりなかもどりました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
一味の者は誰も知らず、係りの平見なにがしは口をつぐんで殺され、その首領の柴田三郎兵衛は、すずもりで腹を切ってしまった。
そしてまたわたしは、あの菜の花の咲きつづく和泉の國、信田しのだもりくずぎつねの傳説をおもひうかべないではゐない。
春宵戯語 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
はる若葉わかば新緑しんりよくもりうつくしさとともに、なつ濃緑こみどりがすんだのちあきはやし紅葉もみぢ景色けしきも、いづれおとらぬ自然しぜんほこりです。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
「ちょっとしたことだ、明日あすの晩十二時に、この前のすずめもりね、あそこへ来てくれないかね、手間はとらさないが」
雀が森の怪異 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
ただすもりがぼーっと霞んで見えなくなる。おや自分は泣いてるなと思って眼瞼まぶたを閉じてみると、しずくの玉がブリキくずに落ちたかしてぽとんという音がした。
食魔 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
あるとき、そこへもりはうから、とぼとぼと腹這はらばふばかりに一ぴきのかな/\があるいてきました。はねなどはもうぼろぼろになつてべるどころではありません。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
すなわち荒木古童あらきこどうが『残月ざんげつ』、今井慶松いまいけいしょうが『新曲洒しんきょくさらし』、朝太夫あさたゆうが『おしゅん伝兵衛でんべえ』、紫朝しちょうが『すずもり』のたぐいこれなり。
一夕 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
わたくしかくれていたところ油壺あぶらつぼせま入江いりえへだてた南岸なんがんもりかげ、そこにホンのかたばかりの仮家かりやてて、一ぞく安否あんぴづかいながらわびずまいをしてりました。
そも/\われは寄辺よるべない浮浪学生ふらうがくしやう御主おんあるじ御名みなによりて、もり大路おほぢに、日々にちにちかてある難渋なんじふ学徒がくとである。おのれいまかたじけなくもたふと光景けしき幼児をさなご言葉ことばいた。
池の向こうに、もりしげった高台が見えました。そこは上野公園うえのこうえんでしたが、新吉はそんなことは知りません。
曲馬団の「トッテンカン」 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
さていままをしたいろ/\のかたち古墳こふんは、今日こんにちのこつてゐるものには、たいていまつ樹木じゆもくしげつて、遠方えんぽうからながめると、こんもりしたもりのようにえるのですが
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
その晩は月は何処のもりにも見えなかった。深くすみわたった大気の底に、銀梨地ぎんなしじのような星影がちらちらして、水藻みずものようなあお濛靄もやが、一面に地上からはいのぼっていた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
船が松の青い島々をめぐって行くうちに、同船のもり知事がって、かの老人たちを紹介した。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
奪ひ取り仕合せ宜と獨笑ひとりゑみしてお兼が死骸しがい見遣みやりもせずすゞもりの方へとはしり行こそ不敵ふてきなれ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
歸路かへり眞闇まつくらしげつたもりなかとほときぼくんなことおもひながらるいた、ぼくあしべらして此溪このたにちる、んでしまう、中西屋なかにしやではぼくかへらぬので大騷おほさわぎをはじめる
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
かぜはなかつた。空氣くうきみづのやうにおもしづんでゐた。人家じんかも、燈灯ともしびも、はたけも、もりも、かはも、をかも、そしてあるいてゐる我我われわれからだも、はひとかしたやうな夜霧よぎりうみつつまれてゐるのであつた。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
僕は夢に従姉いとこの子供と、三越みつこしの二階を歩いてゐた。すると書籍部とふだを出した台に、Quarto 版の本が一冊出てゐた。誰の本かと思つたら、それがもり先生の「かげ草」だつた。
本の事 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
一月三十一日 下鴨しもがもただすもり。木屋町大千賀。王城等鹿笛同人招宴。年尾と共に。
五百五十句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
足下あしもとには、広いしろ玩具おもちゃのように小さくなって、一足ひとあしまたげそうでした。にわもり城壁じょうへきほりなどが、一目ひとめに見て取れて、練兵場れんぺいじょう兵士へいしたちが、あり行列ぎょうれつくらいにしか思われませんでした。
強い賢い王様の話 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
實家じつか上野うへの新坂下しんざかした駿河臺するがだいへのみちなればしげれるもりのした暗侘やみわびしけれど、今宵こよひつきもさやかなり、廣小路ひろこうぢいづればひる同樣どうやうやとひつけの車宿くるまやどとていへなればみちゆくくるままどからんで
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
奥羽おううきっての勢力家で、小心で、大の野心家であった伊達政宗だてまさむねさえ、この年少気鋭な三代将軍の承職に当たって江戸に上った際、五十人の切支丹の首がすずもりではねられるのをのあたり見て
よる白々しらじらけそめて、上野うえのもりこいからすが、まだようやゆめからめたかめない時分じぶんはやくも感応寺かんのうじ中門前町なかもんぜんちょうは、参詣さんけいかくれての、恋知こいしおとこ雪駄せったおとにぎわいそめるが、十一けん水茶屋みずちゃや
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
白樺しらかば赤楊はんのきかさなりもりしげみに銃架じうかかげはけふもつゞいて
あちらのもりでふくろうが、二声ふたこえずつくぎってきはじめました。
花のき村と盗人たち (新字新仮名) / 新美南吉(著)
うは神無備かみなびもり小路こみち
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
安逸あんいつの、醜辱しうじよくの、驕慢けうまんもりの小路よ
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
それからもりんでゆき
鸚鵡:(フランス) (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
もりにかヽりしにじかいな。
桜さく島:春のかはたれ (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
こなたもりなる学堂がくどう
全都覚醒賦 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
つきもりうへ
赤い旗 (旧字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
小暗をぐらもり巖角いはかど
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
もりおくまいには、毎日まいにち木枯こがらしがいて、ちつくすと、やがてふかゆきもりをもたにをもうずめつくすようになりました。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
ほしは、くろうみや、さむさのためにふるえているもりや、まどまって、ひとんでいない小屋こやなどを見下みおろしながら、うなずきました。
雪の上の舞踏 (新字新仮名) / 小川未明(著)
で、あしはこうちいたいたので、宛然さながら城址しろあと場所ばしよから、もり土塀どべいに、一重ひとへへだてた背中合せなかあはせの隣家となりぐらゐにしかかんじない。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
よこつてからは東隣ひがしどなりもりこずゑめうかはつてえるので凝然ぢつつめてはつかれるやうにるのでまた蒟蒻こんにやく手桶てをけうつしたりした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
けれどもそのときいたうたが、こころそこまでんでたので、それからは、毎日まいにちうたをききに、もりかけてきました。
此外▲有明ありあけうら岩手いはでうら勢波せばわたし井栗ゐくりもりこしの松原いづれも古哥あれども、他国たこくにもおなじ名所あればたしかに越後ともさだめがたし。
なんでもい、もう二其處そこへはかないから!』ひながらあいちやんは、もりなか徒歩おひろひきました。『莫迦ばかげた茶話會さわくわいよ、はじめてたわ!』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)