)” の例文
たして、真夜中まよなかのこと、ぶつかるかぜのために、いえがぐらぐらと地震じしんのようにれるのでした。かぜ東南とうなんから、きつけるのでした。
台風の子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
其頃そのころ東京とうきやういへたゝむとき、ふところにしてかねは、ほとんど使つかたしてゐた。かれ福岡ふくをか生活せいくわつ前後ぜんごねんつうじて、中々なか/\苦鬪くとうであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
斯くてつべきに非ざれば、やうやく我れと我身に思ひ決め、ふと首を擧ぐれば、振鈴の響耳に迫りて、身は何時いつしか庵室の前に立ちぬ。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
いよいよ野原がおしまいになって、わたしたちはてしのない長い町の中にはいった。両側りょうがわには見わたすかぎり家がてこんでいた。
た又、我が父祖の国をして屈辱の平和より脱せむが為めに再び正義の名を借りて干戈かんくわを動かさしむるの時に立ち至らざるや否や。
渋民村より (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
なにわすてて、狂氣きやうきごとく、その音信おとづれてくと、おりうちやう爾時そのとき……。あはれ、草木くさきも、婦人をんなも、靈魂たましひ姿すがたがあるのか。
三尺角拾遺:(木精) (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
まず、りっぱな御門におどかされたお露は、とみにははいれずに、しばし門の前をいったり来たりしたが、これではてしがない……。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
建振熊命たけふるくまのみことは、しまいには、これではてしがないと思い直して、急に味方の兵をひきまとめるといっしょに、向こうの軍勢に向かって
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
二つのを口にかざしながら、雲とも夕霧ゆうぎりともつかない白いものにボカされているてへ、声かぎりび歩いてきた。返辞へんじがない。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
八穂 (朗詠する)おあねえさま……いかなる恋に傷ついて……うち棄てられた岸のほとりで、あなたはおてになりましたか……
喪服 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
恋愛を除きたる暁には恐らく美術も文学も価なき珠となりつべけん、の軽佻なる元禄文学は遊廓内の理想家とも言つべき魔道文学者
昨夜さくやも、一昨夜いつさくやも、夕食ゆふしよくてゝのち部室へやまど開放あけはなして、うみからおくすゞしきかぜかれながら、さま/″\の雜談ざつだんふけるのがれいであつた。
時間のてんとする頃、前の日に見覚えた若い婦人が、階段を上って行くのを認めたが、この日は別に階段の途中に立ちどまることもなしに
階段 (新字新仮名) / 海野十三(著)
六年間只奉公ただぼうこうしてあげくのてに痛くもない腹を探られたのは全くおつだよ。私も今夜という今夜は、慾もへちまもなく腹を立てちゃった。
親子 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
これらは八三顔子がんしが一ぺうあぢはひをもしらず。かくつるを、八四仏家ぶつかには前業ぜんごふをもて説きしめし、八五儒門には天命と教ふ。
しかし、せいうへ共通きようつうといふことが、たして、思想しさう感情かんじやう共通きようつうといふことよりも、重大ぢうだい影響えいきやうがあるかどうか疑問ぎもんである。
読書の態度 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
をとこらしうもをなごらしうもえて、獸類けだものらしうもゆるともない振舞ふるまひ! はてさて、あきてた。誓文せいもんわし今少もすこ立派りっぱ氣質きだてぢゃとおもうてゐたに。
それでも兄神あにがみはやはり約束やくそくたそうとしませんでした。すると女神めがみ出石川いずしがわの中のしまえていた青竹あおだけってて、目のあらいかごをこしらえました。
春山秋山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
きやくさまは此處こゝにとしめしたるまゝ樓婢ろうひいそきたり障子しやうじそと暫時しばしたゆたひしがつべきことならずと
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
とても今日こんにち一日いちにちではききるまい、といふ氣持きもちを、つまじき景色けしきかな、とかういつたのです。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
誰某たれそれはいが、行詰ゆきづまつたてに、はくをつけにくのと、おなじだとおもはれると、大変たいへん間違まちがひなんだ。」
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
そこで、家来たちがさっそくその松の根元をって見ますと、たして宝物の名刀が出て来ました。
とんまの六兵衛 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
かんざしだの、鬼灯だの、太白飴だの、葡萄餅だの、竹かんろだの、あやめ団子だの……そうしたかない、こまこました、縁日々々した露店が透きなくならんだのである。
浅草風土記 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
御承知ごしようちのように日本につぽんは、きた北緯五十度三十分ほくいごじゆうどさんじつぷん千島ちしまてから、みなみ二十二度にじゆうにど臺灣たいわんにわたる細長ほそなが島國しまぐにで、地理上ちりじよう臺灣たいわん南部なんぶ𤍠帶ねつたいに、本州ほんしゆう北海道ほつかいどう温帶おんたいに、千島ちしま
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
はじかれた煎豆いりまめのように、雨戸あまどそとしたまつろうは、いも一てて、一寸先すんさきえなかったが、それでも溝板どぶいたうえけだして、かど煙草屋たばこやまえまでると
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
れつ先頭せんとう日章旗につしやうき揚々やう/\として肥馬ひままたが将軍しやうぐんたち、色蒼いろざざめつかてた兵士へいしむれ
ては懷中から小さな算盤そろばんを取り出し、節くれ立つた指で、やりにくさうにはじき出した。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
アルチュ・ツルグー(アルチュの化身けしんという意味)が美しい女を女房にして寺の財産をことごとく女房の家に送って、揚句あげくてに残りの品物をすっかり纒めてどこへか逃げてしまった。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
文明進歩して罪を野蛮人に得る者というべし。学術技芸たして何の効あるべきや。
日本男子論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
こんな者にてまして、お目通りはいたさねえ筈でござんしたが、十年振りでこっちの方へ、流れてきたので思い出して、他所よそながらお尋ねしてえと、きょう小半日うろついて
一本刀土俵入 二幕五場 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
そなたもとおり、わし自尽じじんしててたのじゃが、この自殺じさつということは神界しんかいおきてとしてはあまりほめたことではないらしく、自殺者じさつしゃ大抵たいていみな一たんはくらところかれるものらしい。
「疑いが晴れて何よりでござる、おたずねを受けて名乗る程の者でもござらぬが、いかにも以前は弓矢取る身、九州菊池の一党にて、磯貝平太左衛門武行が成れのてでござりますわい」
轆轤首 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
元来神は、吾人の見る事の出来ぬ渺漠びょうばくたるもの、ては、広大無限、不可思議の宇宙を造り、その間には、日月星辰山川草木と幾多の潤色がしてある。今我が立てる処もまたその撰にもれぬ。
穂高岳槍ヶ岳縦走記 (新字新仮名) / 鵜殿正雄(著)
普通人の生活といふものを、その女のところではじめて知つた、深い、せない思ひ出があればこそ、果敢はかなくてた、夕顏の宿の女も心にのこつて、いつまでもいつまでも消えなかつたのだ。
夏の夜 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
エヒミチはまどところつてそとながむれば、はもうとツぷりとてゝ、那方むかふ野廣のびろはたくらかつたが、ひだりはう地平線上ちへいせんじやうより、いましもつめたい金色こんじきつきのぼところ病院びやうゐんへいから百歩計ぽばかりのところ
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
両眼殆んど凍傷にかかりたるか、色朱のごとく、また足は氷雪の上を引摺ひきずりしため、全く凍傷に罹る等実に散々のていに打ち悩まされ、ここに気力全くてて、終に何時いつとなく、人事不省におちいりたり
杣夫なる尾張屋爺はさむらいのれのてなり剣術を知る
小熊秀雄全集-01:短歌集 (新字旧仮名) / 小熊秀雄(著)
また、きのこる鬱金香うこんかうれててたる白牛しろうし
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
ああ白骨! これはなんぴとのてであるか?
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
波頭に 白く まろく、またかなく
打つもてるも火花のいのち
『春と修羅』 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
の伊佐奈呼息いきたえてぬ。
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
うつてじと投げぬれば
騎士と姫 (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
ために
若菜集 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
やがて、とことはのやみとなり、くもすみうへうるしかさね、つきほしつゝてて、時々とき/″\かぜつても、一片いつぺんうごくともえず。
寸情風土記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
いかに時頼、人若ひとわかき間は皆あやまちはあるものぞ、萌えづる時のうるはしさに、霜枯しもがれの哀れは見えねども、いづれか秋にはでつべき。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
かじをとるさえものうき海の上を、いつ流れたとも心づかぬ間に、白い帆が雲とも水とも見分け難きさかいただよい来て、ては帆みずからが
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
けんとして満足まんぞくうちっていないばかりか、たいていは、なみにさらわれてしまったとみえて、一めんてた野原のはらわっていたのです。
塩を載せた船 (新字新仮名) / 小川未明(著)
かれの顔つきを見ていると、憲兵けんぺいとしてかれはわたしの言いつけをたすよりも、弁護人べんごにんとしてゼルビノをかばってやりたいように見えた。
「敵空軍の目をのがれるため、外観は出来るだけてたままにしておいた。しかし、あの煙突だけは、仕方なく建てた」