まが)” の例文
坂を下り切つて、油屋の前から右へまがつたところで、小學校でちよつと教はつたことのある山下といふ愛想あいそうのよい先生にゆきあつた。
坂道 (旧字旧仮名) / 新美南吉(著)
とほりかゝるホーカイぶしの男女が二人、「まア御覧ごらんよ。お月様。」とつてしばら立止たちどまつたのち山谷堀さんやぼり岸辺きしべまがるがいな当付あてつけがましく
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
まがつた社會しやくわい正當防衞せいたうばうゑいくさつたなか大清潔法だいせいけつはふ、それらを完全くわんぜんちか執行しつかうするには、死刑しけいおほ利用りようするよりほかにないとかんがへた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
やがてお柳の手がしなやかにまがって、男の手にれると、胸のあたりに持って居た巻煙草は、心するともなく、はなれて、婦人おんなに渡った。
木精(三尺角拾遺) (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
鍋町なべちやううらはう御座ございますかと見返みかへればいな鍋町なべちやうではなし、本銀町ほんしろかねちやうなりといふ、らばとばかりいだまた一町いつちやうまがりませうかとへば
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
場所ところ山下やました雁鍋がんなべの少し先に、まが横丁よこちやうがありまする。へん明治めいぢ初年はじめまでのこつてつた、大仏餅だいぶつもち餅屋もちやがありました。
同月どうげつ二十八にちには、幻翁げんおう玄子げんしとの三にん出掛でかけた。今日けふ馬籠方まごめがた街道かいだうひだりまがつた小徑こみち左手ひだりてで、地主ぢぬしことなるのである。
なれども仔馬はぐんぐんれて行かれまする。向うのかどまがろうとして、仔馬はいそいで後肢あとあしを一方あげて、はらはえたたきました。
雁の童子 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
とほりまがつて横町へて、成るく、はなし為好しいしづかな場所を撰んで行くうちに、何時いつ緒口いとくちいて、思ふあたりへ談柄だんぺいが落ちた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
食堂が兩方のまがり角になつてゐて、書齋、寢室、湯殿、控部屋と、ずつと奧に、すぐに庭へ出られる廣い部屋が二室あつて、義弟の家では
北京の生活 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
旅亭やどや禿頭はげあたまをしへられたやうに、人馬じんば徃來ゆきゝしげ街道かいだう西にしへ/\とおよそ四五ちやうある十字街よつかどひだりまがつて、三軒目げんめ立派りつぱ煉瓦造れんぐわづくりの一構ひとかまへ
その人影は、牛丸がとびだすのと、ほとんど同時に、廊下のかどまがったので、牛丸はその人物のうしろ姿をほんの一瞬間見ただけであった。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
シラチブチはもとの小貝川がSの字形じけいに流れたまがの名で、渦を卷いて澱んでゐる頃は一の繩が下までとゞかぬと言はれた。
筑波ねのほとり (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
其壁そのかべして、桑樹くはのき老木らうぼくしげり、かべまがつたかどには幾百年いくひやくねんつか、うつとして日影ひかげさへぎつて樫樹かしのき盤居わだかまつてます。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
その角からまがる茶室の羽目板はめいたもろとも南の陽を内懐に挟み溜め、ちょうどこの木に対して片箱フレームの作用をするからでもありましょうか。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
支那しなでは、たゞいままをしたように新石器時代しんせつきじだいのものがるばかりではなく、その北方ほつぽう黄河こうがながれがきたまがつて、またみなみへをれてるあたりでは
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
そこへまた、このあいだ城外へ出て行った浄信寺じょうしんじ雄山ゆうざんが、まがだにの奥から、わざわざ人夫に石塔せきとうを負わせて、帰って来た。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かぎなりにまがった縁先えんさきでは、師匠ししょう春信はるのぶとおせんとが、すで挨拶あいさつませて、いけこいをやりながら、何事なにごとかを、こえをひそめてはなっていた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
ソレッ! というのでさんみだし、奥の間さして駈け入ろうとすると、かたえの廊下のまがかどから、静かな声がいて来て
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
てん恩惠めぐみかさね/″\くだり、幸福かうふく餘所行姿よそゆきすがた言寄いひよりをる。それになんぢゃ、意地いぢくねのまがった少女こめらうのやうに、口先くちさきとがらせて運命うんめいのろひ、こひのろふ。
僕はSに別れてから、すぐにその次の横町をまがった。横町の角のかざり窓にはオルガンが一台えてあった。
死後 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
逡巡ぐづ/″\してゐずにあいちやんはかぜのやうにはしりました、うさぎかどまがらうとしたときに、『あれッ、わはしみゝひげうしたんだらう、おそいこと』とふのをきました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
その事を云つて巴里パリイでかこつた相手の事も思ひ出される。車屋の角をまがるともう美阪家みさかけの勝手の門が見えた。
帰つてから (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
真黒まっくろ帽子ぼうしをかぶり、真黒まっくろふくをつけ、真黒まっくろくつをはき、手にまがりくねったつえっていました。かおには真白まっしろひげえて、そのあいだから大きなが光っていました。
強い賢い王様の話 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
そして、——てはならん‥‥と、一所懸命しよけんめいかんがへてはゐながら、何時いつにかトロリとまぶたちて、くびがガクリとなる。あしがくたくたとまがるやうながする。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
明日あしただつてえゝのに」卯平うへいあとつぶやいた。かれはぶすり/\とくちくのであつたがそれでも先刻さつきからのやうにひねくれまがつたことはれまではいつたことはなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
一のうてなをかを卷くこと第一の圈の如し、たゞ異なるはその弧線アルコのいよ/\はやくまがるのみ 四—六
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
そして中央まんなかところがちょっとまがって、ななめにそとるようになってります。岩屋いわや所在地しょざいちは、相当そうとうたかい、岩山いはやまふもとで、やますそをくりいてつくったものでございました。
とうさんのおうちのおはか永昌寺えいしやうじまでのぼさか途中とちうひだりはうまがつてつたところにありました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
かれたる老樹折れてみちよこたはりたるをこゆるは臥竜を踏がごとし。一条ひとすぢ渓河たにかはわたり猶登る事半里ばかり、右に折れてすゝみ左りにまがりてのぼる。奇木きぼく怪石くわいせき千態せんたいじやう筆を以ていひがたし。
その実験室にあったありふれた感応起電機をまわしてパチパチ長い火花を飛ばせながら、いわゆる稲妻形に折れまがるその火花の形をかず眺めておられたことがあったそうである。
指導者としての寺田先生 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
かくて傳吉は小娘に誘引いざなはある家に入て見ればはしらまがりてたふのきかたぶき屋根おちていかにも貧家ひんかの有樣なれば傳吉は跡先あとさき見回し今更立ち出んも如何と見合ける中に小娘はたらひ温湯ぬるゆ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
見られなくなつてしまつたやうお由の夫長次が返り討に遭ふまががね薄暮の場の嘗て都下の劇場で上演されたことを識つてゐる人々も亦追々とこの東京からなくなつて行くであらう。
異版 浅草灯籠 (新字旧仮名) / 正岡容(著)
なんなんでもいしはれませんよ。晩餉ごはんはまだなんですか。そんならおしへてげませう。此處こゝひだりまがつて、それからみぎれて、すこし、あんたと昨日きなふあつたみちのあの交叉點よつかどです。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
廊下を二角ふたかどまがつてギヤルソンのけたのは白い冷たい感じのする部屋であつた。かちかちと云はせてあちこちのねぢをねぢると、あるだけのが皆いた。黄色いに見えるやうになつた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
林のまがかどやせまいやぶのなかにかかると、はいどう、はいどう馬を止めて、ゆっくりあるかせます。あぶないはしの上でも溝川どぶがわのふちでも、ほい、ほい、いいながら、ぶじに通りぬけました。
たにしの出世 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
『経律異相』四八に、竜に卵生・胎生・湿生・化生の四あり、皆先身瞋恚はらたてこころまが端大たんだいならずして布施を行せしにより今竜と生まる、七宝を宮となし身高四十里、衣の長さ四十里、広さ八十里
このとき中央ちゆうおう山脈さんみやく斜面しやめん沿うて堆積たいせきしてゐた土砂どさ全體ぜんたいとして山骨さんこつはなれ、それが斜面しやめんながくださいまがところおいて、雪崩なだれの表面ひようめんあるひひらいたり、あるひぢたりしたものゝようであるが
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
平次はさすがに、斬口のまがつた工合から、刄先の狂ひを見て取りました。
此雑木山のまがかどに、一本の檜があって、八幡杉の下からよく見える。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
かくのごとき人の心には余裕がある。すなわち生木なまきのようなる弾力だんりょくがあって、世の変遷へんせんとともに進む能力を保留している。「老木ろうぼくまがらぬ」とは邪道じゃどうに迷わぬの意より弾力なきを笑うの言である。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
おもしろのこの木のふりやまがるにもほどのよければ人の咎めず
礼厳法師歌集 (新字旧仮名) / 与謝野礼厳(著)
七十の老父、まがりし背もらん計りにぞ嬉しがりける。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
そのひだりまがつた建物は何んです
あなやいままちかどより人まがる。
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
まがつた腰もかまはずに
秋の小曲 (新字旧仮名) / 漢那浪笛(著)
やがておりうがしなやかにまがつて、をとこれると、むねのあたりにつて卷煙草まきたばこは、こゝろするともなく、はなれて、婦人をんなわたつた。
三尺角拾遺:(木精) (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
小川町の角で、はす須永すながうちまがる横町を見た時、彼ははっと例の後姿の事を思い出して、急に日蔭ひかげから日向ひなたへ想像を移した。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
(洋傘直し、洋傘直し、なぜ農園の入口でおまえはきくっとまがるのか。農園の中などにおまえの仕事しごとはあるまいよ。)
チュウリップの幻術 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
何処どこまで歩いて行つても道はせまくて土が黒く湿しめつてゐて、大方おほかた路地ろぢのやうにどまりかとあやぶまれるほどまがつてゐる。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)