黒斑くろぶち)” の例文
そうしてその一軒の大きい方の店頭には、いつも一匹の黒斑くろぶちの猫がくびも動かさずに、通りの人人を細目に眺めながら腹這はらばって寝ている。
あめんちあ (新字新仮名) / 富ノ沢麟太郎(著)
その黒斑くろぶちの小さな犬は気でも違ったように、やかましく吠えたけりながら、酔っぱらいのまわりを廻っており、男はいまにもつんのめりそうな恰好で
五瓣の椿 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
をとこ塵塚ちりづかさがす黒斑くろぶちの、ありてようなきものともゆべし、此界隈このかいわいわかしゆばるゝ町並まちなみ息子むすこ生意氣なまいきざかりの十七八より五にんぐみにんぐみこししやく八の伊達だてはなけれど
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あしの軸に、黒斑くろぶちの皮を小袋に巻いたのを、握って離すと、スポイト仕掛けで、つッと水がほとばしる。
茸の舞姫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
芝原に二匹の犬が巫山戯ふざけている。一匹は純白で、一匹は黒斑くろぶちで、どこからくわえて来たか知らず、一足のふる草履ぞうり奪合ばいあって、追いつ追われつ、起きつまろびつ、さも面白そうに狂っている。
一日一筆 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
白い頭の上から墨汁の瓶をぶっかけられたように、黒斑くろぶちのある白犬だ。
吠える (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
汚い黒斑くろぶちの犬がのそのそと歩いて私の坐つてゐる窓の処に来た。
谷合の碧い空 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
となりの黒斑くろぶちのはいった花がすぐ引きとって云いました。
ひのきとひなげし (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
男は塵塚さがす黒斑くろぶちの尾の、ありて用なき物とも見ゆべし、此界隈に若い衆と呼ばるゝ町並の息子、生意氣ざかりの十七八より五人組、七人組、腰に尺八の伊達はなけれど
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あけくれのうはさにも御出世といふは女に限りて、男は塵塚ちりづかさがす黒斑くろぶちの尾の、ありて用なき物とも見ゆべし、この界隈かいわいに若いしゆと呼ばるる町並の息子、生意気ざかりの十七八より五人組七人組
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)