うるはし)” の例文
正にこれ、はてしも知らぬ失恋の沙漠さばくは、濛々もうもうたる眼前に、うるはしき一望のミレエジは清絶の光を放ちて、はなはゆたかに、甚だあきらかに浮びたりと謂はざらん
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
待居たり或日將軍家には御庭おんにはへ成せられ何氣なにげなく植木うゑきなど御覽遊ごらんあそばし御機嫌ごきげんうるはしく見ゆれば近江守は御小姓衆おこしやうしう目配めくばせし其座を退しりぞけ獨り御側おんそば進寄すゝみより聲をひそめて大坂より早打はやうちの次第を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
その人はよはひ三十六七と見えて、形癯かたちやせたりとにはあらねど、寒樹の夕空にりて孤なる風情ふぜいひとり負ふ気無げなうるはしくも富める髭髯ひげは、下にはあたりまで毿々さんさんと垂れて
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
ゆゑに彼の恋は青年を楽む一場いちじようの風流のうるはしき夢に似たるたぐひならで、質はそのぶんに勝てるものなりけり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)