麗々れいれい)” の例文
大礼服を着た父と自分と並んだ写真を入れて麗々れいれいしく飾り立て、その下に黒檀に象眼ぞうがんのある支那ものらしい茶棚が並べられてあります。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
いったい何新聞だろうと、その時まで気にも留めないでいた第一面を繰りもどして見ると、麗々れいれいと「報正新報」と書してあった。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
しかし『宮川舎漫筆みやがわのやまんぴつ』巻三には、早同じ話に若干の相違を伝え、公表せられた狐の書というものにも、野干坊元正やかんぼうげんせい麗々れいれいと署名がしてあった。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
彼は例の袋を片手でぐっと締扱しごいて、再び何か投げ込む真似まねを小器用にしたあと麗々れいれいと第二の玉子を袋の底から取り出した。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
宿の表に麗々れいれいと触れ看板を掲げたからには、早乙女主水之介と知っているに不審は起らないが、昔ながらのお手並久方ぶりに拝見とは、いかにも不審でした。
そもそもまたそんな人物の手紙を麗々れいれいと仕立てて掛けておくという心懸けのほどが、僕には解らんねえ
贋物 (新字新仮名) / 葛西善蔵(著)
あお朝靄あさもやて、山蔭の水も千反せんたん花色綸子はないろりんずをはえたらん様に、一たび山蔭を出て朝日がすあたりに来ると、水も目がさめた様に麗々れいれいと光り渡って、滔々とうとうと推し流して来る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
みな麗々れいれいと自筆の署名をしているから、これは大変な者が舞い込んだ、と先生に取次ぐ。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
平安朝になっては美人の形容が「あかかがちのように麗々れいれいしく」と讃えられている。
明治美人伝 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
が、遺憾ゐかんながら伊香保へは、高等学校時代に友だちと二人ふたりで、赤城山あかぎさん妙義山めうぎさんへ登つたついでに、ちよいと一晩泊つた事があるだけなんだから、麗々れいれいしく書いて御眼おめにかける程の事は何もない。
忘れられぬ印象 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
看板には電話番号など麗々れいれいしく書きこんではいるが、実は二十間ばかり離れた諸式屋の電話であって、そこの主人とは古い交際であったが、その男は副業に保険の勧誘かんゆうか何かやって居るので
糞尿譚 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
自分が穿いて来た、綺麗きれい鼻緒はなお駒下駄こまげたが、麗々れいれいしく、ごみだらけな床の間に飾ってあるのを持ち出して、突ッかけて、初冬の月が、どこかで淡く冷たい影を投げている荒れ庭を横切りはじめた。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
麗々れいれいしく彼のいわゆる大論文を掲げて得意がるのは、虚栄心の満足以外になんのためになるだろうと疑っていたが、これでみると活版の勢力はやはりたいしたものである。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
あんまり不味まずいから、漢学の先生に、なぜあんなまずいものを麗々れいれいと懸けておくんですとたずねたところ、先生はあれは海屋かいおくといって有名な書家のかいた者だと教えてくれた。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)