鬼火ひとだま)” の例文
小万は上の間へ行ッて窓からのぞいたが、太郎稲荷、入谷金杉かなすぎあたりの人家の燈火ともしび散見ちらつき、遠く上野の電気燈が鬼火ひとだまのように見えているばかりだ。
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
青い鬼火ひとだまが、そこにもここにもふわふわと浮んで、それが烈しいいきおいで町の方に飛んだり、焼け残った樹木の枝や電柱にあたってばらばらとくだけた。
焦土に残る怪 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
小万はかみに行ツて窓から覗いたが、太郎稲荷、入谷、金杉あたりの人家の灯火ともしび散見ちらつき、遠く上野の電気灯が鬼火ひとだまの様に見えて居るばかりである。
里の今昔 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
小さな浮木うきほどになっていたのが、ツウと浮いて、板ぐるみ、グイと傾いて、水のおもにぴたりとついたと思うと、罔竜あまりょうかしらえがける鬼火ひとだまのごとき一条ひとすじの脈が、竜の口からむくりといて
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
小万はかみに行ッて窓から覗いたが、太郎稲荷、入谷いりや金杉かなすぎあたりの人家の燈火ともしび散見ちらつき、遠く上野の電気燈が鬼火ひとだまのように見えているばかりである。
里の今昔 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「帰りに、あすこの曲り角の電信柱の処まで来ると、青い鬼火ひとだまがふわふわと飛んで来て、ぶっつかったのですよ」
黄灯 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
小さな浮木うきほどに成つて居たのが、ツウと浮いて、板ぐるみ、グイと傾いて、水のおもにぴたりとついたと思ふと、罔竜あまりょうかしらえがける鬼火ひとだまの如き一条ひとすじみゃくが、たつくちからむくりといて、水を一文字いちもんじ
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
彼はまた二三日前に人から聞いた鬼火ひとだまのことを思いだした。青い蛍火ほたるびかたまったような火の団りが電柱にぶっつかって、粉粉こなごなになったさまが眼の前に浮んで来た。
黄灯 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
焔のない火玉は鬼火ひとだまだと云う事を聞いていた武士は、興味おもしろ半分に其の後をけてった。
鬼火を追う武士 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
青い蛍火ほたるびかたまったような一団の鬼火ひとだまがどこからとなく飛んで来て、それが非常な勢いで電柱に突きあたった。あたったかと思うと、それが微塵みじんに砕けてばらばらと下におちた……。
黄灯 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)