高台たかだい)” の例文
旧字:高臺
それからこんどは、島のまんなかにあるたいらな高台たかだいにのぼっていきました。そこには風車ふうしゃのほかは、建物たてものはなんにもありませんでした。
ぼくの家は町からずっとはなれた高台たかだいにある官舎町かんしゃまちにあったから、ぼくが「火事だよう」といって歩いた家はみんな知った人の家だった。
火事とポチ (新字新仮名) / 有島武郎(著)
おじいさんは、おさくをしずかな高台たかだいもんのあるうちにつれてきました。この屋敷やしきへは、おじいさんが、ときどき、植木うえき手入ていれにくるのであります。
おさくの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
別荘べっそうがつづく高台たかだいをかけ抜けると、町へ下るながい坂になっている。町へにげれば、追ってくる透明人間を、そこでとらえることができると博士は考えていた。
ただ余が先生について得た最後の報知は、先生がとうとう学校をやめてしまって、市外の高台たかだいきょぼくしつつ、果樹の栽培さいばい余念よねんがないらしいという事であった。
東京で白金台しろがねだいとか小日向台こびなただいとかいうダイは、河沿い海沿いの段丘のごとき、上の平らな高地のことで、高台たかだいと言う語もあり、既墾の地は台畑だいばたなどとも言っている。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
僕んちはここから十三丁も離れているが、高台たかだいに在るせいか、家の屋上からあのネオン・サインがよく見える。それは朱色しゅいろ入墨いれずみのように、無気味ぶきみで、ちっとも動かない。
電気看板の神経 (新字新仮名) / 海野十三(著)
小石川春日町こいしかわかすがまちから柳町やなぎちょうさすちょうへかけての低地から、本郷ほんごう高台たかだいを見る処々ところどころには、電車の開通しない以前、即ち東京市の地勢と風景とがまだ今日ほどに破壊されない頃には
彼は浮かない顔をしながら、どんよりと曇った高台たかだいの景色を硝子ガラス戸越しに眺めていた。
彼 第二 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
晴れるとも曇るとも思案の付かない空が下界を蔽い、本郷一帯の高台たかだいを吹き廻る風はヒューヒュー鳴って、大学前の大通りを通る程の物が、カサカサと乾涸ひからびた微かな音を立てゝ居た。
The Affair of Two Watches (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
お屋敷様は高台たかだいでございますから、余程風通しもよくて、へい御門は何うもこと/″\く熱うございまする、へい、これは何うも有難うございまする、わたくしは御酒をいたゞきませんからお茶は誠に結構で