駆出かけだ)” の例文
旧字:驅出
これが小説家であるなら今時駆出かけだしの作家でも一箇月に三拾円や五十円は取るのだもの、文壇の人に成つて拾年以上も経て居る。
執達吏 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
ばばあがやかましいから急ごう、と云うと、髪をばらりとって、私の手をむずと取って駆出かけだしたんだが、引立ひったてたうでげるように痛む、足もちゅうで息がつまった。
縁結び (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
大原様の奥様がお通りだといって人が駆出かけだして見るよ。だから和女も行儀を好くして村にいる時のようにお芋の立食なんぞをしてはいけないよ。オホホ和女も嬉しいだろう。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
□寝をされた事は世間へ知れない様にして下さいと云うから其の積りで、そうして棟梁も拾円ったなんぞと云うと、彼の娘は人がいから真赤まっかになって、金を置いて駆出かけだすから
課長の前の既決書類函から書類を取出していた少女の給仕は、猫の子問答のおかしさにえられなくなって、書類を抱えると大急ぎで後向きになって、すたすたと戸口の方へ駆出かけだした。
鞄らしくない鞄 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「いや、駆出かけだしの虚無僧で、そのほかには何も吹け申さぬ故、これで御免」
大菩薩峠:07 東海道の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「さつき、駆出かけだして来て、薬屋の前でころんだのね、おおきなりをして、をかしかつたよ。」
処方秘箋 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
と云うから、森松は次の間の所へ駆出かけだして
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「強情だねえ、」といつたが、やっと手を放し、其のまゝ駆出かけださうとする耳の底へ
処方秘箋 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
たつくちとなへて、此処ここから下の滝の伏樋ふせどいに通ずるよし言伝いいつたへる、……あぶなくはないけれど、其処そこだけはけたがからう、と、……こんな事には気軽な玉江が、つい駆出かけだして仕誼ことわりを言ひに行つたのに
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)