うまや)” の例文
旧字:
いつの間にか、トチトチトン、のんきらしいひびきに乗って、駅と書いた本所停車場ステイションの建札も、うまやと読んで、白日、菜の花をながむる心地。
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
定基は図らずも三河の赤坂のおさの許の力寿という美しい女に出会った。長というのはうまやの長で、駅館をつかさどるものが即ち長である。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
早馬駅はゆまうまや」は、早馬はやうまを準備してあるうまやという意。「堤井」は、湧いている泉を囲った井で、古代の井はおおむねそれであった。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
しかるに大南といううまやへ着いた晩のことだが、父の五百助がとつぜん病みだし、そのまま寝ついてしまった。
播磨はりまの国加古かこうまや丈部はせべもんといふ博士はかせあり。清貧せいひんあまなひて、友とするふみの外は、すべて調度の絮煩わづらはしきいとふ。老母あり。孟氏まうしみさをにゆづらず。常に紡績うみつむぎを事として左門がこころざしを助く。
春の日も古きうまやの山羊の子は鈴ももたずて夕帰るなり
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)