首筋くびすじ)” の例文
「あのあおむけている首筋くびすじてやろうか。だいぶあつよろいているが、あの上から胸板むないたとおすぐらいさしてむずかしくもなさそうだ。」
鎮西八郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
礼を言う女のかお潤沢じゅんたくな髪を島田に結うた具合、眼つきに人を引きつけるところ、首筋くびすじから背へかけてすっきりした……どう見てもお浜です。
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
何か考え事して歩いていると、ふとしたとたんに何を考えていたのか忘れてしまって、ええ何だっけなあ、ええ、と私は思わず首筋くびすじをたたいた。
風宴 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
ぎょッ! とすると玄蕃、思わず自分の首筋くびすじへ手をやった。が、よく見る迄もなく、これはいよいよ気狂いである。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
つぎ綺麗きれい首筋くびすじ、形の好いはな、ふツくりしたほゝ丸味まるみのあるあご、それから生際はえぎはの好いのと頭髪かみのけつやのあるのと何うかすると口元くちもと笑靨ゑくぼが出來るのに目が付いた。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
しばらくたつと、鳥が一つ羽ばたきをしましたので、王子はまたしっかとその首筋くびすじにしがみつきました。
夢の卵 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
生徒はひとりとして顔をあげ得なかった、水々とした黒い頭、生気のみなぎる首筋くびすじが、糸を引いたようにまっすぐにならぶ、そのわかやかな胸には万斛ばんこくの血が高波をおどらしている。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
二弦にげんの手軽なバラライカで、その音もゆかしい爪弾つまびきを聴きに集まる、胸や首筋くびすじの白い娘たちにめくばせをしたり、口笛を吹いたりする、あの二十歳はたち前後のおしゃれで剽軽ひょうきんな若者たちの装飾かざりでもあり
王子はちょっと迷いましたが、鳥のめのう色のやさしい眼を見ると、すっかり信じきった気持ちになって、その背中へ飛び乗って、柔らかい首筋くびすじへしっかとしがみつきました。
夢の卵 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
七兵衛が首筋くびすじを締め上げると、紙屑買いは苦しい声を張り上げて
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そのとたんに、ふと気がゆるんで、鳥の首筋くびすじにしがみついてた手を離したものですから、あッというまに王子は鳥の背中から滑って、まっ逆さまに城の上へ落ちてゆきました。
夢の卵 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)