なり)” の例文
男が女のなりをしたり、女が男の風をしたりしてお関所をくらますようなことがあると、なかなか面倒には面倒になるんでございますね
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ところへ何処かの奥さんが来て、お母さんと談話はなしを始めた。やはり見物に来たんだ。御大層ごたいそうなりをしている。ちんを抱いている。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「女も変った」と原は力を入れて、「田舎から出て来て見ると、女の風俗の変ったのに驚いて了う。実に、華麗はでな、大胆な風俗だ。見給え、通る人は各自てんでに思い思いのなりをしている」
並木 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「拙者もこんななりをして、浪人どもの捜索と、腕の利いた同志を探しに歩いている。よい所で行き逢った、早速壬生へ行こう」
「よろしい、この人のあとをつけてみよう、自分は笠をかぶって、酒屋の御用聞のなりをしているのだから、勝手が悪くはない」
大菩薩峠:20 禹門三級の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
山奥からポット出の木地師になりを変えて、そうして天秤棒を一本だけ、お鉄砲かついだ兵隊さんのように、肩にのせてすまし込んで歩いている。
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
といって、いま思案にふけりながら神社の境内を歩いて行く兵馬を、階段の方から呼びかけたものがありました。見れば、旅のなりをした若い町人です。
大菩薩峠:05 龍神の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
それが、寝まき姿のしどけないなりをして、不意にこの場へ現われて呼びかけたのは、人でなくしてけものでありました。
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
羽団扇はうちわもなにも持っちゃいなかったし、あたりまえの旅人のなりをしていたんだが、その足のはやいこと……すっとすれ違ったと思ったら、あの地蔵辻から
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
やかたの工事場の方へ、とつかわと出て行ったが、そこには工事監督の不破の関守氏が行者のようななりをして立って、早くもお雪ちゃんの来るのを認めている。
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
出家姿で女を連れて歩くというのもなものだから、あたりまえの武士のなりをして行くがよかろう。
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
御当人は鷹揚おうようのようでいて、更に御油断というものがございません、それにあなた、附添のが野暮ななりこそしていらっしゃるが、これがみんな相当、腕に覚えもあれば
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
やむを得ずんば職工になって……君のように労働者のなりをして、忍んで見て来たいと思うている
お通りなさることや……また殿方が女のなりをなさったり、女のお方が殿方にこしらえたりして、お関所をお通りになることが現われますると、それは大罪になることでござりまする
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
しかし、今晩のような夜空に、こんななりをして、ここらを彷徨ほうこうするということは大なる抜かりで、早くもとどろきの源松の注視を受けたということは、大なる不覚と言わなければなりません。
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
この中の主人公というものが、田舎いなかの旦那らしいなりはしているが、どうして——
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「親方、この刀を差していた人というのは、どんななりをした人だったかね」