風前ふうぜん)” の例文
思へば風前ふうぜんともしびに似たる平家の運命かな。一門上下しやうかはなひ、月にきやうじ、明日あすにもめなんず榮華の夢に、萬代よろづよかけて行末祝ふ、武運の程ぞ淺ましや。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
かくて風前ふうぜんともしびのようにあやうかった青竜王の生命は、僅かに死の一歩手前で助かった。
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
まつ風前ふうぜん燈火ともしびの如くあは墓無はかなき有樣なり皆々は目を數瞬しばたゝ念佛ねんぶつとなへ夜の明るを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
北口の将兵が全滅するのはもう時間の問題である。そして南口の大隊の運命も風前ふうぜんともしびにひとしい。それは誰しも予感していることである。それにも拘らずなお原隊に止まろうとするのは何か。
日の果て (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
風前猶剰旧夭斜 風前ふうぜんあま旧夭きゅうようななめなり〕
向嶋 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
もつて月番南町奉行大岡越前守殿へ引渡し相濟ける之に依て大岡殿も一通り吟味の上口書こうしよ并びに書取の通り符合ふがふなすに於ては月番老中しゆうかゞひの上附札つけふだにて御仕置仰せ付らるゝの手續てつゞきなる故今富右衞門が命は風前ふうぜん燈火ともしびの如し再調さいしらべに引出さるゝ其有樣數日の拷問につかはて總身そうしん痩衰やせおとろ鬢髭びんひげ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)