くび)” の例文
翁に向ってその名を問うとくびを振って決して答えない。又親や、兄弟があるかと問うても、ただ「無い。」といってのことは語らなかった。……
(新字新仮名) / 小川未明(著)
橋のたもとに眠りし犬くびをあげてその後影を見たれどえず。あわれこの人墓よりや脱けでし。たれに遇いれと語らんとてかくはさまよう。彼は紀州なり。
源おじ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
欝金草賣は謹んで無言のままにくびれた。壁際高くホルバインの傑作、アルバ公爵の肖像畫が掛けてあつて、そこよりにらむ糺問法官の眼光にすくんで了つた。
欝金草売 (旧字旧仮名) / ルイ・ベルトラン(著)
くび彼方あっちへふり此方こっちへふり、お百度の歩く通りに左右へ頭を廻して、とうとう仕舞しまいまで見て居りました。
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
取候事なげきの中の喜びにして是ひとへに御上の御威光ごゐくわう有難ありがたき仕合せに存じ奉ると申し述けるていまことしやかに見えしかば傳吉は覺悟かくごのことゆゑたゞくびを下て嘆息たんそくの外なかりけり今日は皆々白洲を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
私は短刀を片手に提げたままくびをガックリと傾けた。
けむりを吐かぬ煙突 (新字新仮名) / 夢野久作(著)