さわり)” の例文
三十日に大暴風おおあらしで阪の下に半日留められた外は、道中なんのさわりもなく、二人は七月十一日の夜品川に着いた。
護持院原の敵討 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
われら一類がわざおびやかされて、その者、心を破り、気をきずつけ、身をそこなえば、おのずから引いて、我等修業のさまたげとなり、従うて罪のさわりとなって、実はおおいに迷惑いたす。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
孔明こうめい兵を祁山きざんいだす事七度ななたびなり。匹婦ひっぷ七現七退しちげんしちたい何ぞ改めて怪しむに及ばんや。唯その身の事よりして人にるいおよぼしために後生ごしょうさわりとなる事なくんばよし。皆時の運なり。
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
横須賀より乗るべかりしを、出発になんなんとしてさわりありて一じつの期をあやまりたれば、武男はくれより乗ることに定め、六月の十日というに孤影蕭然しょうぜんとして東海道列車に乗りぬ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
さわり申すことの出来ぬあなたにも、12020
画家 雨ぐらいは何のさわりもありません。
山吹 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)