闇黒くらやみ)” の例文
木遣きやりでも出そうな騒ぎ。やがて、総がかりで女をかつごうとしていると、そばの闇黒くらやみから、りんとして科白せりふもどきの声が響いた。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
水辺にばかり気を取られていた捜査線を見事に突破して、闇黒くらやみとともにいずこへともなく逃走してしまった。たぶんチャアリイをれたまま。
チャアリイは何処にいる (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
外部の重い闇黒くらやみのなかで、もうジェノアが近づいているに相違なかった。どこかに港のにおいがすると、私は思った。
踊る地平線:10 長靴の春 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
先刻から闇黒くらやみの中に潜んでおりました際に、の寝棺の蓋をソッと開きまして、この少女を仮死状態から覚醒せしむべく、同博士独特の何等かの刺戟手段を施しつつ
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
うたがひはかる柳闇花明りうあんくわめいさとゆふべ、うかるヽきのりやとれど品行方正ひんかうはうせい受合人うけあいてをうければことはいよいよ闇黒くらやみになりぬ、さりながらあやしきは退院たいヽんがけに何時いつ立寄たちよれのいゑ
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
もうあたりは黒白あやめも分らぬ闇黒くらやみの世界で、ただ美しい星がギラギラとまたたくのと、はるかにふりかえると、後にして来た地球がいま丁度夜明けと見えて、大きな円屋根まるやねのような球体きゅうたいはし
月世界探険記 (新字新仮名) / 海野十三(著)
胸へ落ちて來る闇黒くらやみのほのめきにははてがない
太陽の子 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
闇黒くらやみのなかの雪みたいに大きく群れてるのは恋のかもめたちだろう。むこうにちかちかするのは、羅馬ローマ七丘になぞらえて七つの高台に建ってるリスボンの灯だろう。
法医学教室の裏手に連なる松原の闇黒くらやみ伝いに、人眼を避けつつ屍体を担いで行く、若林博士の異様な姿を、その松原の附近に設けられている実験用の動物の檻の中から、野犬の群が発見して
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
『ねえペトラさん、まだ話が決まりそうもないでしょうか。僕あもう闇黒くらやみの中で眼をつぶって歩いても、ひとりでにこの窓の下へ来るようになりましたよ。』
そして約半日闇黒くらやみに慣らしたのち、やにわに戸をあけて「運命の戦場」へ駆り立てるのだ。このとき、ドアを排すると同時に、上からくぎでひょいと背中を突いてやる。
びっくりたけり立って闇黒くらやみを飛び出し、その飛び出したところに明光と喚声が待ちかまえているので、このにわかの光線・色彩・群集・音響に一そう驚愕し、首に養牧者ブリイダア勲章デヴィサを飾ったまま