間然かんぜん)” の例文
大体の構想に痕跡のぬぐうことのできないものはあるが、その他は間然かんぜんするところのない独立した創作であり、また有数な傑作でもあって
怪譚小説の話 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
尊王攘夷の大趣意において間然かんぜんする所あらんや。その表面よりすれば言正しくしたがい、その裏面よりすれば、わざわい未測に陥らんとす。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
立ったまま、向い合って湯をざぶざぶ腹の上へかけている。いいなぐさみだ。双方共色の黒い点において間然かんぜんするところなきまでに発達している。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
一個の人格者としてのモーゼスも、又間然かんぜんする所がなかった。公平で、正直で、謙遜で、判断力に富んでいると同時に、又絶大の同情心にもんでいた。
氏の挙動きょどうも政府の処分しょぶんも共に天下の一美談びだんにして間然かんぜんすべからずといえども、氏が放免ほうめんのちに更に青雲せいうんの志を起し、新政府のちょうに立つの一段に至りては
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
平生の知己に対して進退行蔵こうぞうを公明にする態度は間然かんぜんする処なく、我々後進は余り鄭重ていちょう過ぎる通告に痛み入ったが、近い社員の解職は一片の葉書の通告で済まし
三十年前の島田沼南 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
革の美しさはもとより、漆塗の色、刺し方の術、組紐くみひもの技、間然かんぜんする所がありません。特に籠手のようなものは、革の性質から生れた形の美しさが、あらわであります。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
血液は威勢よく走り出るので、少しも凝固を起さず、実験は間然かんぜんするところが無い。心臓は勇ましく躍る。その躍る姿を眺めて居ると、左手に少しの痛みをも覚えない。
恋愛曲線 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
かつや圓朝氏固より小説家ならねば談話の結構に於ては或は間然かんぜんするところ有るも、話中出るところ夥多かたの人物老若男女貴賤賢愚一々身に応じ分にかなえ、態を尽し情を穿ち
松の操美人の生埋:01 序 (新字新仮名) / 宇田川文海(著)
間然かんぜんする所なしとのみたゞ今となりてはに申すやうも無之候これなくそろ
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)