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梅水は、以前築地一流の本懐石、江戸前の料理人が庖丁をびさせない腕をみがいて、吸ものの運びにも女中のすそさばきをにらんだ割烹かっぽう
灯明之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
少女はびたる針金の先きを捩ぢ曲げたるに、手を掛けて強く引きしに、中には咳枯しはがれたる老媼おうなの聲して、「ぞ」と問ふ。
舞姫 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
あの美しい緑色は見えなくなって、びたひわ茶色の金属光沢を見せたが、腹の美しい赤銅色しゃくどういろはそのままに見られた。
例えば大木の根を一気に抜き取る蒸気抜根機が、その成効力の余りに偉大な為めに、使い処がなくて、びたまゝ捨てゝあるのを旅行の途次に見たこともある。
北海道に就いての印象 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
なぜと云ふに折目がびてゐるからだ。多分釘は槌で打ち込む時折れたのだらう。折れながら打ち込まれて、頭の痕を窓枠の下の方に印するまで這入つたのだらう。
びた小指ぐらいな銅像が三個、嵌め込まれている、日本山岳会員の名刺が三枚ほどしまわれている、冠松次郎氏、中村有一氏、加山龍之助氏などで、去年又は本年の登山者である
槍ヶ岳第三回登山 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
聖母マドンナの像の壁上より落ちぬればなり。否々、びたる釘はいづれの時か折れざらん。まことに我をして走り避けしめしものは、我脈絡中なる山羊の乳のみ、「ジエスヰタ」派學校の教育のみ。
落葉を見れば、片焦かたこげてび赤らめるそのおもて
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
新開しんかいまちびて、色赤くみだるる屋根を
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
己もまだしんまでびてしまってはいない。
少女はびたる針金の先きをぢ曲げたるに、手を掛けて強く引きしに、中には咳枯しはがれたる老媼おうなの声して、「ぞ」と問ふ。
舞姫 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
それが青白くされびて、あがったうなぎを思わせるような無気味なはだをさらしてうねっていた。
旅日記から (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
そのさざめきの間に、潮でび切った老船頭の幅の広い塩辛声しおからごえが高くこう響く。
生まれいずる悩み (新字新仮名) / 有島武郎(著)
びて腐蝕しながらも、奉納白根大日如来寛政七年乙卯六月と読まれた、白峰赤石両山脈の頂で、山の荒神たちと離れられない関係があるらしい、鉄の槍身が、赤びになってたおれていた。
白峰山脈縦断記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
巽は目を離してゆびさしたが、宮歳の顔を見て、びた声して低く笑った。
浮舟 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
びてゆくなまりくやみ、しかすがに
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
少女はびたる針金の先きをねじ曲げたるに、手を掛けて強く引きしに、中には咳枯しわがれたる老媼おうなの声して、「ぞ」と問う。
舞姫 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
槍はびても名は鏽びぬ
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
びた鉄瓶、焼き接ぎのあとのある皿なんぞが、それぞれの生涯の ruineルユイイヌ を語る。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)